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北海道・十勝の児童詩誌「サイロ」のこと

北海道・帯広を拠点に,昭和35年から60年近くにわたって現在も毎月発行され続けているすごい文芸誌があります.「サイロ」という児童詩誌で,帯広に本社工場のある菓子メーカー・六花亭の創業者・小田豊四郎が創設しました.挿し絵は六花亭の包装紙も描いている山岳画家の坂本直之が,すべて無報酬で引き受けたということです.それが伝統となり,現在でも毎月の選考委員はすべて手弁当で活動していて,冊子自体も無料で配布されています.サイドは以下.

児童詩誌 サイロ http://www.oda-kikin.com/sairo.html

投稿者は十勝地方の小中学生の子どもたちですが,幼児の言葉を親が書き留めたものを投稿することもできるようで,これは全国何処からでも可能とのこと.広い農場での手伝いや,十勝平野の自然に対する感受性が,多くは不器用だが瑞々しく,時に先鋭的とすらいっていい言葉で綴られていて感銘を受けます.

前々回に触れた更科源蔵は,開拓期の北海道農民にとって,稲作は不可能,大豆が収穫できれば御の字で,それすらできなければビートやじゃがいもを作って牛を飼う以外になかったとして,「サイロには開拓農民のうめきがつまっている」と書きました.しかし,小田豊四郎の「サイロ」はそうした悲哀とは逆に,生業の支柱ないしは誇りのシンボルであり,十勝がようやく豊かな穀倉地帯として発展を始めた時代に呼応する意識を反映しているとみることができます.

小田はさずがにビジネスで成功した人だけあって前向きで活動的です.その人物像通りに,六花亭という会社としても食文化に関する図書館を持っていたり,美術館を運営していたりと様々な形で地域文化に関わろうという意図を打ち出していて興味深いものがあります.

一方再び更科源蔵を引くと,前掲書中「山麓の人々」の項で,都会での教育に絶望して道内僻地に赴任してくる学校教員のことに触れ,「夕昏になると暗闇の底が啼くような,さびしい声を出すシマリスや,小鳥の囀りのようにおどおどと岩場をかけるナキウサギなど,大陸系の小動物がまだ生息している山地は,すぐれた人間形成のために,最後に残された自然境といえるかもしれない」とも言っています.

内地とくらべてどうしても子どもが優れた文化へ接触しにくいという当時の十勝地方の状況を,子ども自らが表現することを通して変革しようとした小田と,厳しい自然をそのまま受け入れることで骨太な人格形成に役立つと考えた更科.年齢は更科の方が10歳ほど上ですがほぼ同時代人と言っていいでしょう.道内の同じ地域に対するアプローチの違いも興味深いですが,私としてはこうした活動や文筆のおかげで,自分が見て知っている士幌とか浦幌の景色が奥行きのあるものに思えるようになっています.

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最悪想定する傾向はあるでしょうね.でも石橋叩いているだけの人生はつまらない.

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