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写真家 ソール・ライター展

ニューヨークを拠点にi活動した写真家 ソール・ライターの作品展.伊丹市立美術館.

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いきなり余談ですが,このあたりで市立の美術館を持っている町は珍しいです.冠も何もない「市立美術館」は,芦屋市にある1991年設立の市立美術博物館くらいで,伊丹市よりはるかに文化的イメージの強い宝塚市や西宮市にもないし,人口が倍以上の尼崎市にもありません.北部の川西市や池田市には,私立の美術館はいくつかあるものの,市立美術館はやはりありません.1987年から30年以上にわたって自前の美術館を維持している人口20万の伊丹市のことは特筆すべきことと思います.このブログでも,これまで何度か訪問記録を書いています.

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さて今回は,以前ドキュメンタリー映画をきっかけにその存在を知った写真家 ソール・ライターの作品展です.200点の作品が,以下のパートに分けて展示されています.

1.ファッション
2.ストリート
3.カラー
4.絵画(一部カラー写真)
5.ヌード

キャリアの最初期におけるライターの活動の場は,世界最古でかつ現存する女性ファッション誌“Harper's BAZAAR”のカラー写真でした.ファッション誌に載っている写真など鑑賞の対象としての興味はまず持てないと思いがちですが,ライターの目を通した被写体の女性たちは単なる置物ではなく,むしろ独立した人格を感じさせるのが特徴的です.それは,たとえば多用される前景(前ぼけ)の向こうで女性たちのいかにも自然な振る舞いや,あるいは作為なくふと見せる表情の中に集約されています.

その後,マスメディアの世界に嫌気がさした写真家は第一線から身を引きますが,写真をやめたわけではなく,かわりに目を向けたのが都会の何気ない風景です.しかし積極的に作品として発表することはなく,2006年に「再発見」されるまでほとんどの作品は写真家のアトリエに置かれたままだったようです.後のインタビューではそれらを自ら「都会の田園詩」と呼んでいますが,普通はとうてい被写体としては考えないような対象も,この人の目を通すとすばらしく詩情にあふれたものになるのが印象的です.

「自分の敬意は何もしていない人たちに向けられる」のだと言い,確かに被写体となった人たちには何らの作為も感じられません.もっとも,本人たちのほとんどは撮られたことすら気づいていないはずです.しかしそこには窓カラスや鏡に映った事物が被写体と二重写しになって絶妙の効果を生み,また雨や雪といった湿度も独特の空気感を作品に与えるのに重要な役割を与えられています.

多くの作品では,一体何が撮られているのだろうと考えさせられます.写真家自身「自分が何を見ているか確かでない瞬間が好き」であると言っているくらいですがら,その謎めいた意識を作品に定着しようとし,当然それを見る側の人々はそこにある謎を通して作品世界に取り込まれていくことになります.

ちょっと即物的というか現実的な話も知りました.この人の写真に見られる独特の色調は,新品のリバーサルフィルムが高価すぎて買えず,消費期限を過ぎた品物を安く手に入れていたため,やや退色したような味わいが出たのだと.ちょっと甘いような緩いような色調は,まさに「都会の田園詩」にフィットしていたのかもしれません.

今回の作品展では,最後の区画にヌード写真がかなりの数展示されていました.いずれもライター自身の女友達を撮ったものですが,非常に日常的な仕草や,それをさらにのぞき見風に撮っていて,非常に生々しく正直かなりエッチです.とは言っても,劣情を催すというよりは,この娘たちと仲良くなりたいみたいに思わせるところが,この人の作品らしい.

ヌードといえば,うろ覚えで正確ではないかもしれませんが,子供の頃に読んだ北杜夫の「どくとるマンボウ航海記」に,美術館に展示してある裸婦画は,男性の視線によって胸とお尻の部分から削れていくというような話があったことを唐突に思い出しました.こういう作品を人目のある場所であまり長く凝視していると,やはりちょっと恥ずかしい気がしてきます.

最後になりましたが,ソール・ライターは画家としても認められており,事実ナビ派のボナールを賞賛していたり,写真家としてシュルレアリストの資質があると言われたりしたようです.自分の撮影した写真をしばらく(何年も)放置したあと.それを取り出して彩色することも多く,今回も彩色されたヌード作品を多く見ました.個人的にはやはり写真が好きですね.

帰りに美術館売店で最近日本で出版された写真集を買いました.以前映画を見た後に買った英語版の写真集と重複している作品ももちろんありますが,何しろ文章が日本語なのは読みやすくていい.価格も手ごろで,よく売れているようです.

 
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