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クリスチャン・レオッタ シューベルト・プロジェクト -リサイタルⅠ

シューベルトのピアノソナタのうち未完成のものも含めて14曲,および主要ピアノ作品とあわせて計21曲を全7回にわけて演奏する大プロジェクト.京都府立府民ホール“アルティ”.

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3月10日(土)のプロジェクト第1回の曲目は以下.

ピアノ・ソナタ第18番「幻想ソナタ」 D 894

休憩

ピアノ・ソナタ第8番 D 571
「さすらい人幻想曲」 D 760

1曲目,18番のピアノソナタは,私のとても好きな曲です.シューベルトのピアノソナタはどれも好きなので,「中でも特別」というのかもしれません.全体にとても穏やかな雰囲気が支配していて,演奏によってはどこを聴いていいのかわからないような音楽になってしまう傾向があります.ベートーヴェンの書いたような峨々たる音楽建築と比べると,一体どこから来てどこへ連れて行かれるのか不安になるような気さえすることがあります.

しかし,聴けば聴くほどこれこそがシューベルト.特に,平穏だけれど清澄であるような,静かな厳しさを内包した名人の演奏で聴くと,この曲の味わいは格段に増すように思います.レオッタの演奏を評した新聞記事に「しっかりした体幹から送り出される音」というような表現を見ましたが,これはかなりこのピアニストの本質をよく言い表しているように感じました.

非常にゆっくりしたテンポ.でもそのテンポに揺るぎがなく,演奏がとてつもない技量に支えられていることがよくわかります.粒のそろった音列が紡がれ,控えめな旋律が鮮やかに浮き立って聞こえます.ふと能の所作を連想しました.40分を超える演奏時間は私にはあっという間でした.全体にほの暗い世界での魂の彷徨を強く意識させますが,こうしたテーマはまさにシューベルト音楽の核心部です.

20分の休憩をはさんで,後半1曲目.ピアノソナタ第8番は,シューベルトが第1楽章の途中で作曲を断念したため,未完成曲としてほとんど顧みられることのない曲のようです.私もCDは持っていないし,展開部の手前で止まってしまうので,レコード会社としてもピアニストとしても,録音を躊躇するのは当然です.

しかし,この日最大の収穫は,他でもないこの未完の第8番を聴けたことでした.暗く沈んだ嬰ヘ短調.いくら短い断章(演奏時間は7~8分のようでした)だといわれても,とてもこの哀しみや苦悩に最後までつきあっていられないという人がいるかもしれません.しかし,そこにはまぎれもない心の真実があり,苦しいながらの歌もあります.そして終盤には少しずつ明るさも感じられるようになったところで,演奏は唐突に終了します.

最後は「幻想曲ハ長調」.前の2曲とは打って変わって,派手な上にきわめて演奏技巧を要する,ある意味シューベルトらしからぬ曲です.もちろんシューベルトもプロの音楽家として独り立ちする必要があったわけで,一般受けするピアノ曲も書きました.この幻想曲は,シューベルトのピアノ作品として初めて出版された曲なのだそうです.

個人的には前に演奏された2曲を好きになりすぎて,この曲が表面的に聞こえてしまって十分に曲世界に入り込めませんでした.有名曲ですが,たまたまCDを持っておらず,今回初めて聴いて理解不足だったのだろうと思います.ただ,偏見だと言われそうですが,のちにこの曲に「さすらい人幻想曲」という呼称を送って評価したのがフランツ・リストであったことは,私にとって自然に納得できることです.「冬の旅」の彷徨からははるかに遠い気がするのですけどね.

これから予定されている公演すべて聴きたいけれど,何しろ京都なので平日はとうてい無理.残念ですが,休日の公演だけはできるだけ聴きに行きたいプロジェクトです.


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最悪想定する傾向はあるでしょうね.でも石橋叩いているだけの人生はつまらない.

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