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シューベルト最後のピアノソナタを聴く -今峰由香リサイタル 後半(第21番)

休憩をはさんで後半は第21番のソナタ.まさにこれがシューベルト最後のピアノソナタです.

死期をほぼ悟って書かれた3曲のうちの2曲とはいえ,前半に弾かれた20番ではまだ現世への思いや友人たちへのメッセージのようなものを聴きとることができました.しかしこの21番ではもう,冒頭から彼岸の微風(体験したことはないので比喩として適切でないかもしれませんが)の芳香が漂っています.そしてそれと対比して現われる有名な低音部のトリル.

この曲の魅力はやはり長大な第1楽章に集約されると思います.一人で知らない土地の淋しい道を行きつ戻りつ.しかしここにこそシューベルトの音楽の神髄があると思わせる時間が過ぎてゆきます.そして中盤過ぎ,変ロ長調から嬰ハ短調に転調して気分が暗く沈んだかと思うと,再び原調に戻って激情を吐露したあと,次の痛切な場面が現われます.

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ここからしばらくの間の寂寥感と切迫感といったら,私には他に比べるものを思いつきません.誰の演奏を聴くときでも,私はここを身を固くして待っています.今回初めてこの曲をライブできくことができ,最弱音のニュアンスも本当に感じることができた気がします.今峰の演奏自体は,20番でもそうだったように私の持っているシューベルト像よりもやや力強い印象でしたが,明快な解釈の一つとして受容できるものでした.

第2楽章は嬰ハ短調で,陰鬱な空のもと歩み出します.しかしゆっくりというより,足がもう前に出ない感じ.途中でイ長調になって陽が射しますが,やがてまた原調に回帰し,曲調は下降しながら堂々巡りするようなラインをを辿ります.

第3楽章のスケルツォは一転して明るい様子で始まりますが,短い時間のあいだに転調していつのまにか音楽は陰影を帯びてきます.そして,第4楽章.第1楽章であのように始まった音楽が,このようなフィナーレを迎える意味が私にはまだわかりません.軽快なテンポの中で,実は意識はここにはなくどこか遠くを見ているような.今峰の演奏を聴いてもそれを理解するには至りませんでした.

この曲を最後まで聴くといつも,何か完結しないものを感じて腑に落ちない気分にとらわれます.しかし,理解できないところはそっとしておいて,いつかその瞬間が来るのを待ちたいと思います.シューベルトのピアノソナタは,この日聴いた最後の大名作群以外も今の私にとって共感できる歌と響きに満ちていますが,特にこの日のようなプログラムを真正面から採り上げてくれたピアニストに感謝したいと思います.

なお,これらの曲に関して,私が参照している楽譜は下記のものです.アマゾンの古本で購入したのですが,おそらくは若い女性と思われる字で書込みが残っています.シューベルトを「表現」するところまでいったのなら,かなりの腕前の人なのかなと思ったり,またその人の使っていた楽譜が私のような音楽の素養ほぼゼロの素人の手に渡るまでに,どのような人生の転換があったのだろうなどと想像したりしました.

 シューベルト集 2 (世界音楽全集ピアノ篇)

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最悪想定する傾向はあるでしょうね.でも石橋叩いているだけの人生はつまらない.

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