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北斎-富士を超えて- 大英博物館 国際共同プロジェクト

最近またいろいろなメディアで採り上げられることの多い葛飾北斎.大英博物館のコレクションを中心に, 北斎晩年の30年に焦点を当てた作品展.あべのハルカス美術館.

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大規模な北斎展を見るのは,2014年の神戸市立博物館「ボストン美術館の葛飾北斎」展以来です.日本美術の展覧会はもちろん大歓迎ですが,いずれも外国美術館・博物館がらみです.いかに多くの作品が海外へ流出してしまっているかの証で,それらのまとまった収蔵品群がなければ北斎の作品展が成立しないということなのでしょう.なんとも残念です.

さて,展示は以下の各パート.
1.画壇への登場から還暦
2.富士と大波
3.目に見える世界
4.想像の世界
5.北斎の周辺
6.神の領域

北斎は90歳まで生きたので,晩年30年とは還暦以後ということになります.1.での『源為朝』は『椿説弓張月』の挿絵で,同時代人であった滝沢馬琴との交流を伺わせます.2.ではやはり富嶽三十六景の『浪裏』と『凱風快晴』.やはり『浪裏』では,今から200年も前に自然造形のフラクタル構造を意識していた眼力ないしは直感に驚きます.外形線はすべて円弧で表現できると考えていたともいわれ,そうしたプリミティブに還元してモノを把握する概念は相当に現代的です.

富嶽三十六景図は他にも多くの作品が展示されていましたが,いずれもさすがに退色が感じられるものも多いです.その中にあって『浪裏』は,以前神戸で見たボストン美術館所蔵品も,今回の大英博物館所蔵品と同様きわめて鮮やかな色合いを保持していたように見えました.多用されたプルシアンブルーが安定な顔料なのでしょう.

印象に残る作品が多かったのは5.NHKのドラマにもなった,北斎の三女応為(おうい)の作品『吉原格子先之図』.この時代,これだけ光と影を積極的に描こうとした試みというのはあまり見たことがないように思います.また,北斎と応為の合作とされる『菊図』は実物よりずっと大きく描かれた大菊の量感がすばらしかった.

さらに,『浪裏』をさらに追求した果ての作品とされる小布施上町の祭屋台装飾『男濤図』,『女濤図を見られたのも良かった.一対で陰陽を表す太極図のようです.波濤の先端部分が『浪裏』よりもさらに強調され,もはや単なる自然描写を超えた意図を感じます.

6.ではまず『李白観瀑図』に目を奪われます.巨瀑を見上げる李白はごく小さく描かれ,画家の関心は滝そのものを描くことにあるのは明らかです.しかしそれは滝というより銀河あるいはオーロラのようで,ほとんど宇宙的です.あたりには轟音が響いているはずですが,画面から伝わる空気はきわめて静謐で,李白(ここでは北斎)が目に見える事物の在りようの向こう側を見ようとしていることが窺えます.

そして『富士越竜図』.NHKのドラマでは,ラスト近くで北斎が応為達に見守られながら本作の富士の肩から天に昇る竜を描くシーンが置かれていて,大変印象的でした.おそらくこうしたドラマなどの影響で,普段は比較的落ち着いて見られるハルカス美術館がおそろしく混んでおり,近づくのが困難な作品もありましたが,見ておくべきものは見られたと思います.

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最悪想定する傾向はあるでしょうね.でも石橋叩いているだけの人生はつまらない.

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