FC2ブログ

スポーツカーのホイールベース/トレッドは本当に黄金比なのか? -その1:まずは黄金比のこと

先日,ヱビスビールの350cc缶6本パックを買ったら「黄金比タンブラー」というオマケがついてきました.ここで黄金比というのは,ビールを注いだときの泡の比率が3:7がベストだということを言っています.こういう企画を作る人たちも当然わかっていて使っているのですが,もちろん「黄金比」あるいは「黄金数」は正しくはそんな数ではありません.

実は8月の盆休み,今年は元々遠出ができる時間もなく,休み明けの仕事の準備をせざるをえない状況でした.暑すぎて何を考える気にもならないでいる日,たまたまポルシェの営業さんが置いていった立派な全車カタログを見ていて,唐突に「スポーツカーのホイールベース/トレッドは黄金比になるように設計されている」という都市伝説(?)を思い出しました.

結論をまず言うと,設計者がそれを“狙って”図面を描いているなどということは決してありません.雑誌やブログなどでそういう記事を見かけても,そんなのは完全な嘘っぱちなので信じないで下さい.ただ今回,私が集めてみたデータを見ると,調べた車種にはかなり偏りがあるにせよ,黄金比を基準に整理するのは結構面白いのではないかと感じました.上のような伝説がささやかれるのもあながち理由のないことではない気がしたので,2~3回に分けてまとめてみようと思います.

黄金比に相当する数学概念としては,紀元前3世紀頃の編纂とされるユークリッドの『原論』第6巻30に外中比として現われるのが最初ではないかと言われています.『原論』中の記述とは異なりますが,説明のため下の図のような横長(x>1)の長方形A を考えます.この短辺で構成した正方形Bと,残りの縦長長方形Cとに分割したとき,Cを90°回転した横長の長方形が,もとの長方形Aと相似となるような縦横比とはどうあるべきでしょうか.

goldenRatio.jpg
相似の条件として簡単な比の計算より二次方程式
20170910.gif

が導かれ,ここから当然二つの解
20170910_1.gif
が得られますが,長辺はこのうち正の方の値となり,
20170910_2.gif
これが黄金数と呼ばれる無理数で,そもそも3:7のような整数比で表わすことはできません.また,負の解の方もちゃんと意味があるのですが,あまりそのことに触れた解説はないのかな? といっても特に難しいことではないので,もしこれをここまで読んで関心を持たれた読者がおられたとすれば,ご自身で考えてみられるのも楽しいと思います.

さて,黄金数の幾何学的解釈の一つが上の外中比ですが,西洋ではその自己完結性からこの比率が絶対化され,視覚的な美観と関連づけられてきました.この比をもつ長方形は黄金長方形と呼ばれて,最も美しいとされました.しかし人間の視覚ほど当てにならないものもなく,「大体これくらいの縦横比が安定感がある」という程度の話とは区別しなければなりません.スポーツカーのホイールベース/トレッド比が黄金比だから優れているなどという迷信も,何となく神秘的な数というところからくるのかもしれませんね.

黄金数は意外に思えるようなところで現われる不思議な数です.たとえば12~3世紀頃のイタリアの数学者Fibonacci(フィボナッチ)が,ウサギの個体数の増殖モデルとして考えたと言われるフィボナッチ数列.
1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, 55, 89, 144,...
というものですが,各項の値がその一つ前ともう一つ前の項を足し算したものになっています.数式で書くと,
20170910_4.gif
となりますが,隣り合う2項の比を見ていくと,
1,1 → 1
1,2 → 2
2,3 → 1.5
3,5 → 1.6666...
5,8 → 1.6
8,13 → 1.625
13,21 → 1.6153...
21,34 → 1.6190...
34,55 → 1.6176...
55,89 → 1.6181...
89,144 → 1.6179...
となって,大きくなったり小さくなったりしながら徐々に黄金数に近づいていくことがわかっています.フィボナッチの考えたウサギの増殖ルールは次のようなものです.
 1. 1つがいの子ウサギは,1年で親ウサギになる
 2.親ウサギとなった1つがいは,その1年後から毎年1つがいずつ子ウサギを産む
 3.ウサギが死ぬことはない
ウサギの繁殖能力は個体ごとに異なりますし,そもそも不死身のウサギなんているわけないので,こんな無茶な話はありません.しかしこれが生物個体群の増殖パターンの本質をついて実に奥が深いのです.ウサギの頭数が増える比率が一定になるということは,すなわち指数関数だということです.つまり,このモデルでいけば,「時間が十分経った後,ウサギの個体数は黄金数を底とする指数関数に従って増えてゆく」のです.

以上,読み返してみると「やっちまった感ハンパない」とか言うんでしょうかね.結局スポーツカーと何の関係もないことを書いている.タイトルとはかけ離れていて怒られそうですが,次はもう少しちゃんとします.
(続く)



コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

choby

Author:choby
最悪想定する傾向はあるでしょうね.でも石橋叩いているだけの人生はつまらない.

カレンダー
09 | 2018/10 | 11
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
リンク
FC2カウンター