クルターグ・テント 『遊び』をめぐって

ルーマニア(もとハンガリー領)生まれの現代音楽作曲家・ジェルジ・クルターグのピアノ音楽を聴きました.ザ・フェニックスホール.

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大阪大学文学部の伊藤信宏教授のレクチャーが付いたコンサートです.ピアノは北住淳と姫野真紀のご夫婦.初学者向けピアノ教則本として書かれた曲集である『遊び』ですが,そこは20世紀音楽であって,私達が義務教育で習うような音楽とは楽譜からしてまったく違います.レクチャーがあるのは歓迎です.

舞台の上には,天板が外されたグランドピアノが鍵盤を観客席に向けて置かれています.ピアノ協奏曲が弾き振りされる時のスタイルですが,ピアノ単独のリサイタルではほとんど見ない配置です.伊東によれば,特に連弾の時の4本の腕のからまりを見てほしいという意図だとのこと.

最初にピアノの向こうに設置されたスクリーンに映された楽譜の説明です.独特のクラスター音符をはじめ,見たこともない記号やはじめて触れる概念がたくさんあって大変興味深い.何より驚きのクレシェンド記号.ピアノなのに一度叩いた音をどうやって大きくするのか? ピアニストの北住の解釈は,「弾き手なら,自分の耳をピアノに近づければいい」ですと.

こんな調子で伊東とのやりとりをしながらプログラムが進んでいきます.演奏された曲目は以下です.

プログラム  ジェルジ・クルターグ:『遊び』より
《前半》

【ソロ】
  常勤曲(見つけたもの)
  手のひらで 
  はずしても構わなt)
  花は人…(1a/1b)
  散歩 
  よたよた 
  退屈して 
  うしがえるはまったり歩む…

【連弾】
  汚れなき神の子羊(J. S. Bach BWV Deest)
  神の時は最上の時なり(J. S. Bach BWVlO6)
  めぐる歌
  手に手を取って
《後半》

【ソロ・連弾】
  ヴェルディを讃えて

【ソロ】
  知性は自由にする
  影ふみ
  私の愛は…
  チャイコフスキーを讃えて
  リゲテイ:ピアノ練習曲集第1巻より第5番「虹」
       ピアノ練習曲集第2巻より第11番「不安定なままに」
  バルトーク:ミクロコスモス第4巻より第102番「倍音」

【連弾】
  人は全て死すべきなり(J. S. Bach BWV643)
  ミサ(G. d. Machaut)
  ストラヴィンスキーを讃えて
  霧のカノン

                                     ′  
それぞれ子ども向けのタイトルが付けられた短い曲が続きます.私でも弾けそうな(もちろん弾けませんが)曲もあり,しかし追求すればいくらでもその先があるといった風な音楽です.所々にクルターグ編曲によるバッハが挟まれるのは,クルターグ自身の演奏会でも定番の構成なのだそうです.「神の時は最上の時なり」ではピアノから笛のような音が出て,この楽器の奥深さ-あるいは音そのものの不思議さに目を開かれることになります.

クルターグと同郷で年齢も近いリゲティは親友であったそうです.バルトークは彼等の先生筋で,まだハンガリー王国だった時代の生まれですが,アメリカに亡命(移住)してしまったためついに直接指導を受けることはなかったとのこと.彼等の曲が演奏されるのも自然なことですね.痛いほど冴え冴えとしたリゲティが,ちょっと緩い感じのするクルターグととても鮮やかな対をなしていました.これも伊東の言ですが,容姿からのイメージはクルターグがお坊さん,リゲティはマッド・サイエンティスト.

アンコール曲は,パーセル(クルターグ編)「対位法とカノンの実例」.


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最悪想定する傾向はあるでしょうね.でも石橋叩いているだけの人生はつまらない.

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