中川一政展

没後25年を経た画家中川一政の展覧会.香雪美術館.見に行ってからだいぶ時間が経ってしまいましたが,忘れてしまうにはあまりに惜しいのでメモを残しておきます.

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香雪美術館は,朝日新聞社を創業した村山龍平の収集品を公開する目的で開設されました.阪急神戸線御影駅近くの住宅街にある小さな美術館ですが,木々に囲まれて落ち着いた雰囲気があります.本ブログには初登場だと思うので,もう6~7年は行っていなかったことになりますね.

さて,中川一政作品.絵は独学です.誰にも似ていないと言えると思います.処女作は1917年,深江にある酒蔵を描いた『酒蔵』.暗い色調で描かれた(おそらく)歴史ある建物がもつ独立自尊の風格は,まだ若かったこの画家の気概が仮託されたものなのでしょう.この作品が岸田劉生に認められ,画家として世に出ることになったとのことです.

「丁度良いときにゴッホとセザンヌを知った」という言葉を残しているように,『春の川』や『カーニュ(フランス)』などそれぞれの作風を採り入れた作品も今回見ることができました.しかしそれらが直截的に以反映された作品をどれだけ残したのかは,1950年代以降の作品が中心に集められた今回の画展ではわかりませんでした.

全作品中,圧倒的な存在感を示していたのは1973年に発表された箱根の『駒ヶ岳』.私などは箱根駒ヶ岳と言われても,「展望台から富士山を眺める山」という印象しかないのですが,この作品はとにかく画面構成とか色彩とか言う前に全体の力感・生命感に胸打たれます.画家の精神のみならず,肉体が息づかいをともなってそこに在るようです.

花瓶に生けられた椿やバラを描いた作品も多数ありました.特徴的なのは花瓶として用いられている壺で,人物像や天使などが絵付けされたマジョリカ陶器など,生けられている花々と同じかそれ以上に強い存在感をもって描かれています.最晩年になってもこの様式は一貫していますが,背景の群青が次第に濃くなり,主題をますます強烈に浮き上がらせています.

晩年にはそこへ飄逸が加わります.たとえば扇面に描かれた『鯰』には「我は山を動かす」と賛があって,これなど意図した軽みとも見えますが,あまりに力一杯なのがかえって可笑しみを誘うといった風でもあります.中川の書も異彩を放っており,門外漢の私には元祖ヘタウマみたいに見えますが,97歳になって『正念場』と書いてサマになる人も稀でしょうね.これが亡くなる2年前です.

自分の創り出したものが“生きていること”に一生を賭けた芸術家.どの作品も力強い生命感の塊でした.

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最悪想定する傾向はあるでしょうね.でも石橋叩いているだけの人生はつまらない.

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