デトロイト美術館展

デトロイトの姉妹都市である豊田市の美術館での展示が終わって大阪市立美術館に来ました.ここは伝統ある美術館なのに,私はなぜかこれまであまり行く機会がありませんでした.しかし今回の美術展はすばらしかったと思います.

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最初から話が飛びますが,デトロイトと聞いてまず私の頭に浮かぶのは,80年代日米貿易摩擦です.その象徴的な場面が,デトロイトの自動車工場労働者達による,大きなハンマーでダットサンの小型車を叩き潰して穴に放り込むというアピールです.この行為はテレビを通じて世界中に送られ,日本でも見て記憶にある人が多いのではないでしょうか.YouTubeでも見ることができるのでリンクを張っておきます.

日本車を壊すアメリカの労働者 『日米貿易摩擦』

言うまでもなく,デトロイトおよびその近郊は,19世紀後半から重工業地帯として興隆し,それを受けて20世紀初頭に現在のビッグスリーが相次いで設立されたことでモーターシティとして本格的に大発展しました.経済的な背景があったことで文化施設への投資も促進され,1885年にデトロイト美術館が開館しました.規模は全米3位だそうです.

しかし1970年代に入ってアメリカの自動車産業は日本車に席巻され,かつてのデトロイトの栄華も凋落の一途を辿ります.残念ながら,いくら上のようなパフォーマンスをしても,結局のところ自分たちの仕事のやり方が変わらない限り,そしてその結果自分たちの作っているものの質が上がらない限り,没落に歯止めをかけることはできません.彼らがこの時すべきだったのはハンマーでたたき壊すことではありません.そうではなくドライバーとレンチを使ってていねいに分解し,アメリカ車の同機能部品と並べてよく観察することでした.そうすれば,日本人がいかに材料の歩留まりや工場での作業性といったことまで細かく気を配ってクルマを作っているか,開発の上流段階と製造部門がどれだけ緊密に連携しているかということが理解できたはずで...いやこれはいくら何でも話が逸れすぎましたね.

デトロイトの人口は減り続け,治安は悪化しました.アメリカ車の品質自体は1990年代初頭から大きく改善されましたが,それはグローバリゼーションの恩恵であってデトロイト市の財政を立て直すことにはまったくつながらず,労働者の雇用や生活向上には寄与しませんでした.現在のアメリカ大統領選候補者が民主・共和両党とも保護主義的であることは...いや美術館の話でした.

そして2013年,ついにデトロイト市の財政が破綻します.負債額は180億ドルだそうです.約2兆円.莫大ですね.この時点で市の資産と呼べるものはこのデトロイト美術館しかありませんでした.当然債権者からは美術館の収蔵品を処分するよう強烈な圧力がかかります.市では一応試算をして,収蔵品全体で1兆円から2兆円の価値があると見積もったようです.しかし,これほどのコレクションを散逸させるのはあまりに惜しいという米国内外からの援助でからくも存続が決定.今回こうしてその一部を見ただけでも,その決定に感謝したいと思うと同時に,存続のために力を尽くした人たちに敬意を表したいと思います.

あまりに脱線が多すぎて長くなったので,展示作品については次回にします.
(続く)

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最悪想定する傾向はあるでしょうね.でも石橋叩いているだけの人生はつまらない.

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