自動車開発は“簡単”か-その4

最後に,振動・騒音です.

自動車の乗員が振動騒音の影響を受けるのは不可避なことですし,基本的にはこれらのレベルはできるだけ低い方が望ましいと言えます.内燃機関を積んだクルマの場合は,路面からの入力と共に,機関そのものからの加振力とその方向が重要です.

レシプロエンジンの場合は,上下死点でピストンとコンロッドに大きな加・減速度が発生しますので,これが加振力の源です.また,ピストンの往復運動を回転運動に変換するためにコンロッド大端はクランク軸に対してオフセットしていますので,結果的にコンロッドは揺動運動をすることになります.これが,加振方向がシリンダ軸方向だけでなく,その他の方向成分も持つことになる理由です.

シリンダ数とその配列によってアンバランス力やアンバランスモーメントが相殺されたり残ったりしますので,これが直6がいいだのフラットシックスがいいだのという話の根本ですね.

以上はエンジン単体の話です.加振源としてここで振動低減を図るのが第一です.しかし,どうしても残ってしまった加振力成分をどうするかが次に来ます.

一つは,加振エネルギーを吸収してしまうことで,減衰効果の高い材料を介してエンジンを縣架しようということです.特に低回転の振動対策はこれが有効となります.音に関しても,吸音材を入れるのはこの考えですね.

もう一つは,車体側を対策し,人体の触れる部分やキャビンが振動しにくいように振動モードを調節することです.振動モードは基本的には質量と剛性の分布によって決まりますので,これまでと同様,実験やシミュレーションで詰めていくことになります.

また,振動騒音対策がここまでの「剛性・強度」や「衝突安全」と異なるのは,客観的評価基準だけでなく,顧客の主観による評価にもさらされるという点です.このあたりは,同メーカーの同じ系統のクルマなら同じ傾向になるように揃えたいところですが,定量的アプローチの難しいところでもあります.

以上,自動車車体に限っての話ですが,「無論のことそれは理論と経験の両方にバランスよく裏付けられた専門家の仕事だ」ということが言いたくて書いてきました.このブログでは,クルマに関しては主として「ロードスターに乗ること」についてきわめて情緒的に(早い話が好き嫌いだけで)書いてきていますし,今後もそれは変わらないと思います.しかし機械好きとして,クルマをいつも情緒だけで語っているのはやはりマズイだろうという気持ちは常にあります.(終わり)

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最悪想定する傾向はあるでしょうね.でも石橋叩いているだけの人生はつまらない.

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