ピカソ展

ピカソの「青の時代」「バラ色の時代」からキュビズムへ至る過程を俯瞰.あべのハルカス美術館.

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ピカソの作品展というのはありそうでなかなかありません.20世紀最大の画家ということで人気が高く,美術館としても作品を集めるのが大変なのかもしれません.私はこうしてまとまった作品群を見るのは初めてで,大いに期待.会場はほぼ時系列に従って4つのパートで構成されていました.

第1章 |少年時代|
第2章 |青の時代|
第3章 |バラ色時代|
第4章 |キュビスムとその後|

|少年時代|は,ピカソ13歳から20歳の作品群.実は今回の展示ではこの時代の作品がもっとも多く集められています.「わたしは子供じみたデッサンは決して描かなかった」という本人の言葉通り,わずか13~14歳の少年が紙にインクや木炭,鉛筆を使って描いた人物像における,迷いのない堂々とした筆致に驚かされます.あらゆる優れた芸術家に共通して見られる卓抜な洞察力がピカソにも備わっていて,こうした大人びた作品を生み出すのでしょう.社会的弱者へのまなざしが,この時点ですでに作品に現われているのも注目すべきです.

親友の自殺が契機となったとされる|青の時代|.上述のように少年時代にすでに視線が向けられていた貧しさや困窮のうちにある人々の姿が,沈んだブルーを基調とした色彩で表現されています.しかしその画面に刻み込まれた人々は,人生の苦痛の中で厳しい表情をしてはいるものの誇りと品性を失ってはおらず,私の目には精神の不幸が描かれているようには見えません.ここのところが,ピカソの視点において重要な要素ではないかと感じます.

作品が社会的評価を受けるようになり,美しい恋人を得たころに始まる|バラ色時代|.上のパンフレットに採用された『扇子を持つ女』はこの時代の作.ですがもちろんピカソ自身が「これからはしばらくバラ色だ」などと意識していたわけではなく,暗く沈んだ青を基調とした色づかいでの表現から脱却する過程の短い時期だったと捉える方が素直だと思います.

そして|キュビスムとその後|.ピカソが難解と感じられるようになるのはこの頃からです.3次元物体の形態を2次元平面に落とし込むのに,異なった方向から見たビューを同時に描き込んでしまおうという発想は,私の知る限りセザンヌが元祖なのかなと思っているのですが,それをもっとあからさまな形で展開した一人がピカソですね.モランディを見にいった時にも感じたように,こうした試みは絵画史においてその後も繰り返し行われているようなので,やはり近代の画家の最大の関心事の一つなのでしょう.

事物の真実に迫るために,ピカソは一時期そうした手法にのめり込みました.あるときは対象はかなり小さく細分化されて異なった視点が導入され,またあるときは形態の全体性保持の方に力点が置かれた作品が生まれました.ピカソは表向き非常に大胆にそのスタイルを変化させた画家のように見えますが,こうした試みの成果は後の『泣く女』とか,あるいは大作『ゲルニカ』の中にさえ見出すことができます.

超有名作はありませんが,むしろ後年の大傑作群への歩みを知るのに好適な展覧会かもしれません.展示の何点かは会期l後半に入れ替えがあるので,梅雨時天気がよくない休日にでもまた行ってみようかなと思います.



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