理髪店で聴いたジャズ -「アルト・メモリーズ」

理髪店の予約時間5分前に着き,ドアを開けるといきなりこのアルバムに入っている『Lonely Woman』が耳に飛び込んで来ました.


アルト・メモリーズ
ジャズ

ゲイリー・バーツとソニー・フォーチュンというほぼ同い年のベテランサキソフォン奏者による,歴史上のジャズ・ジャイアンツに対するトリビュート作品.『Lonely Woman』は,言うまでもなく1960年オーネット・コールマンの名高い「ジャズ来たるべきもの」A面第1曲です.現代の町をいくら歩いて探したって絶対に聞こえてこないタイプの音楽の強い磁力が,空間をそのものを歪ませているかのようです.

この曲の持つそうした魅力に惹かれてか,過去多くの先鋭的なジャズマン達がこの曲を採り上げてきました.オリジナル・アルバムで,オーネットとドン・チェリーがほとんど即興的演奏をしていないことも,彼らの想像力をかきたててきたのかもしれません.このアルバムでは,ソニー→ゲイリーの順でソロを演奏します.ソニーの方は前奏で設定されたテンポをそのまま踏襲しますが,ゲイリーはやや速めた演奏.片やジョン・コルトレーンに心酔し,他方はスピリチュアルな演奏で名を馳せた演奏者であり,こういう曲には個性が最大限に発揮されます.

アルバムの冒頭に置かれたオリバー・ネルソン作の大名曲『Stolen Moments』では,特にソニー・フォーチュンのフリーキーなトーンがよく活かされています.2曲目の『U.F.O』だけはバーツのオリジナルのブルースで,ここではソニーが抜けてバーツだけがソロを取りますが,もちろん快演です.

3曲目キャノンボール・アダレイのレパートリーとして有名なデューク・ピアソン作『Jeannine』.私はこういうファンキー・チューンが大好きです.しかし,二人のアルト奏者のソロはいずれも随所にコルトレーンライクなフレーズが聴かれ,いわゆるファンクネスの特徴とは異質なものを感じます.このアルバムが録音されたのは1994年ですが,この世代のサキソフォン奏者にとって,ジョン・コルトレーンの影響がいかに強烈であったかを改めて認識する演奏です.

この後も,ビバップ期からはジジ・グライスとチャーリー・パーカー,ハード・バップ期からはジャッキー・マクリーン,そしてオーネット・コールマンを経て最後はスイング期の名プレーヤーであるジョニー・ホッジスとベニー・カーターへ回帰して終わるところが構成上なかなかニクいところです.もっとも個人的にはやはり上に挙げた2,3曲が印象に残ります.どうしても本家の演奏が思い浮かんでしまうし,それを超えたところでオリジナルの表出を志すのはハードルが高いですね.トリビュート作品の難しいところです.

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最悪想定する傾向はあるでしょうね.でも石橋叩いているだけの人生はつまらない.

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