ネパール・旅の風景 -ポカラへの山岳路

カトマンズのゆったりした雰囲気と,あの隣国よりもはるかに穏やかな人々のおかげで復調した私は,再び移動を始めることにしました.復帰後最初の目的地はカトマンズの西方200km,ネパール第2の都市・ポカラです.

カトマンズからポカラへは当時もちゃんと空路があって,それなら数十分で行けました.しかし旅費を節約してできるだけ長く滞在したい私は,当然陸路を選択することになります.しかしそのバス旅行は,たった200kmですが実に生命の危険さえ感じる8時間の苦闘となりました.

2大都市を結ぶ長距離バスとはいえその実態はローカルバスで,頻繁に停留所で停まり,その都度地元の人およびその人が連れた家畜が乗り込んできます.最初はエキゾチックだなと余裕をかましていましたが,そのうち日本の都市部通勤電車なみの混雑になりました.こうなると息苦しさともに家畜たちの発する匂いが充満してきて,終いにはもう堪えられないほどになりました.

これは無理だと,ある停留所で停止した際,乗り込んでくる人たちに押し出されるようにしてバスの窓から外に出て,ルーフキャリアへの梯子を登りました.登っているうちにバスが動き出してこのときはほんとに死ぬかと思いました.ルーフへ上がるともう何人か先客がいて,登るときに手を貸してくれた私と同年代の西洋人の女の子と「だよねー」という感じで黙って顔を見合わせて笑いました.アレを我慢するのは彼女にも難しかったでしょう.

しかし,もちろん屋根の上も天国ではありません.吹きさらしのオープンルーフ状態はまあいいとしても,未舗装の道路はでこぼこで揺れがひどく,キャリアの手すりにしがみついていなければ落ちてしまいそうです.深い深い峡谷に沿ってつけられた道はぎりぎり離合できる程度と狭く,あちこちで崖崩れの痕跡が残ったままになっています.そんな場所を通過するときは車体が大きく谷側に傾き,嫌でも谷底を覗き込むことになります.おそらくは旅行者と思われる女性が漏らす小さな悲鳴が何度か聞こえました.

いずれにしても-というのは,車内にいようがルーフキャリアに乗っていようがということですが-バス自体が転落すればまず助かる見込みはないでしょう.実際,この路線でのバスの遭難は過去何度も起こっていると聞いていました.とにかくドライバーが無茶なことをしないように祈るしかありません.

こうして何とかポカラにたどり着くのに約8時間を要したと記憶しています.途中,利用できたトイレは一カ所だけだったと思います.ただ,この時の旅全体を通してみてもハードな移動でしたが,季節が良かったためか,それとも高揚感のためか,あるいは恐怖で感覚がおかしくなっていたせいかは不明ですが,そんなに疲労を感じませんでした.

幹線道路ゆえ,あの道もこの35年のあいだに随分手が入れられたのではなかったかと思いますが,今回の地震でそうした重要なインフラがどうなったか気がかりです.もっとも私にはもう,あの道をバスで通行するというようなマネはできませんが.

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最悪想定する傾向はあるでしょうね.でも石橋叩いているだけの人生はつまらない.

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