ベートーヴェンのピアノ・トリオ曲を聴く

樫本大進,小菅優,クラウディオ・ボルケスによるトリオがベートーヴェンのピアノ三重奏曲を演奏しました.兵庫県立芸術文化センター大ホール.

20160529.jpg


ライブで音楽を聴くのはものすごく久しぶりです.1月17日にカトリック夙川教会でフォーレのレクイエムを聴いて以来.芸文センターへはなんと去年10月のスウェーデン放送合唱団以来です.昨年秋は私としては時間がなく,半年以上先のコンサート・チケットを取っている余裕がなかったのでした.

この日は腕利き(豪腕)三人組によるベートーヴェンのピアノトリオ演奏.しかし,よほどのクラシック音楽ファンでもない限り,ベートーヴェンを聴きたいとなったときに,わざわざピアノトリオ曲を選ぶ人はいないのではないでしょうか? 「退屈」 という評判も耳にしますし.そもそも私はこの日のプログラムでは第7番「大公」以外は知りません.

結論が先になりますが,そういう曲こそやはり実力者による実演を聴くべきだということがよくわかったコンサートでした.前半.おそらくはコンサートでの演奏機会が少ないであろう第1番.明るい気分でスタートして愉悦感がありますが,突然短調になってまたすぐ立ち直るところなど,ちょっとモーツァルトっぽかったりします.まだ交響曲には着手しておらず,第1番のピアノソナタの作曲と相前後する時期に書かれたようなので,やはり先達の影響があるのかなと感じました.ヴァイオリンとチェロのゆったりした対話など,やはり後年のベートーヴェンらしい大柄さが窺えるようにも思いました.

第2番も長調の曲ですが,第1楽章出だしのヴァイオリンが内省的に響きます.第2楽章のラルゴも美しいですがやはり後年の作品の意味深さを求めることはできません.全体としては快活さが支配し,特に最終楽章のプレストはその傾向が顕著です.

20分の休憩をはさんで後半.第7番「大公」です.作曲は1811年とされ,これは交響曲5,6番(運命,田園)が完成し,あのリズミックな第7番を書くまでの間の時期です.第1楽章における,胸を張って大きく息を吸い込んだように印象的な主題では,何となく弦楽四重奏曲の『ラズモフスキー』を思い出しました.しかし私の耳には,この曲のもっとも大きな聴き所はやはり気高いとも深いとも感じられる第3楽章だと思います.特に前半部,ピアノパートが心の底からの真実の歌をうたう場面は,決して雄弁ではないけれど胸打たれるものがありました.

3人はまだ若いですが互いに長い音楽的交流があるそうで,実際とても仲が良さそうに見えました.最初にも書いたように,特に前半の2曲はあまり聴き所がないのではと思っていたのですが,彼らの闊達な演奏によってそのように間違った先入観は一掃されました.第2番の演奏で小菅優が微笑ましいミスをしたりして,こうしたところも素直に笑えてしまう雰囲気も好感が持てました.これら3曲を通して,ベートーヴェンの音楽の多面性が改めて確認できたことが収穫だったと思います.


コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

choby

Author:choby
最悪想定する傾向はあるでしょうね.でも石橋叩いているだけの人生はつまらない.

カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
リンク
FC2カウンター