ドメニコ・スカルラッティのピアノソナタ集

最近は美術展に行くと必ず音声ガイドを借りるようになりました.料金はどこでも600円のことが多いですが,知識をもって鑑賞しているわけではない私のような者にとっては,鑑賞のための一つの視座を与えてもらうことで,ただ眺めていては気づかないことにも意識が向くようになってありがたいものです.

先日見に行ったジョルジョ・モランディ展でも,いつもと同じくガイドを借りました.ガイド役は京都大学大学院の岡田温司氏と,兵庫県立美術館学芸員の江上ゆかさんですが,二人ともこの画家に対する愛情と敬意が感じられ,かつ専門家らしく余計な色付けのない解説ぶりで大変好感が持てました.こういうところはやはり俳優など使わない方がいいですね.

ところで,この時の音声ガイドのバックに流れていた音楽が大変品格の高いピアノ曲で,どこかで聴いた気はするけど誰の作かわからなくて気になっていたのでしたが,そのうちよく知っている曲が鳴り,そこでやっとこれがドメニコ・スカルラッティ作曲の鍵盤曲であることがわかりました.

スカルラッティはバッハやヘンデルと同じ年の生まれで,数百曲におよぶ鍵盤曲を作曲しました.わざわざ鍵盤曲というのは,この時代はまだ現代ピアノに相当する楽器は存在せず,チェンバロで演奏されることを想定して書かれましたが,現代ではやはりピアノで弾かれることも多いからです.

この作曲家の何百曲もあるソナタ形式の鍵盤曲をすべて私が知っているわけもなく,私が持っている下のCDで馴染んでいる曲が出てきてはじめてわかったという次第です.このディスクについては,以前少しだけ触れたことがあります



スカルラッティ:ソナタ集
クラシック音楽


同じイタリア人芸術家同士とはいえ,時代ははるかに隔てられています.印象主義の画家とドビュッシーを結びつけるのはまあわかりやすいとしても,モランディのバックにスカルラッティを持ってくるためには,やはりヨーロッパ芸術に通暁し,なおかつ彼ら二人の芸術が共有するものを見抜いている必要があります.

人間の物語とは少し距離を置き,一方はチェンバロという鍵盤楽器で響きの可能性を追求し,他方は極めて限定されたモチーフを通して純粋な光と色と形の関係を理解しようとした.生み出された作品はどちらも静謐で,気高い精神の存在を感じさせるという特質を持っています.音楽と絵画という様式は違っても,彼らは200年という時を隔てた双生児のようです.


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最悪想定する傾向はあるでしょうね.でも石橋叩いているだけの人生はつまらない.

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