パウル・クレー展

20世紀の抽象画家クレーの絵画展.兵庫県立美術館.

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全体は6部に分けられ,それぞれ興味深いタイトルが付けられています.時系列とはほぼ無関係な構成.
第1章 何のたとえ?
第2章 多声楽(ポリフォニー)-複数であること
第3章 デモーニッシュな童話劇
第4章 透明な迷路,解かれる格子
第5章 中間世界の子供たち
第6章 愚か者の助力

以前,チューリヒ美術館展で見た『狩人の木のもとで』と『スーパーチェス』.大変に相異なった作風のように思えたのですが,今回こうしてクレーの作品110点あまりを見た後この2点の絵画を思うと,線描と方形区画分割というクレー絵画固有の特質が明瞭になります.もちろんこの画家はそのように少数のキーワードで語れるような人ではありませんが,今回のクレー展で私自身の印象に強く残ったのはそれら二つの特質でした.

故・吉田秀和がクレーの絵画に言及した『ソロモンの歌|一本の木』の《クレーの跡》が印象に残ります.ここで吉田は,クレーの『忘れっぽい天使』を採り上げ,その線描が行われた順序について詳細な検討を行っています.私は,クレーによるこれら一連の天使の線描を,子供の描いたような絵だなと思っていましたが,現物をよく観るとそこにはきわめて明確な意思と確信があり,幼児の無邪気さなど微塵もないことがわかりました.

一方で,吉田の著作にもあるとおり,クレーの絵画が具象・抽象の対象を描くというより,描くという行為自体の中から次々と生まれてくる線の形や色の組み合わせが,次第に表情をもち,最後には全体性をうるというプロセスを辿るらしいことは注目に値します.《クレーの跡》からのまた引きですが,次のクレー自身の言葉から私は,絵画創作という行為に対する見方を一変させられました.

「私はかつて文学的モティーフをイラストレートした覚えはない.私は,まず,絵画的に形成し,そのあとで,指摘思想が絵画の思想と,偶然,合致したときには,よろこんだのだ」

吉田の2冊の著書『ソロモンの歌|一本の木』と,『忘れっぽい天使』が表紙に用いられた『永遠の故郷─夕映』を挙げておきます.


ソロモンの歌・一本の木 (講談社文芸文庫)
書籍

永遠の故郷─夕映
書籍



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