ルーヴル美術館展

京都市美術館.春先は桜見に常照皇寺や高山寺に行きましたが,京都の町中に来るのはずいぶん久しぶり.昨年11月のホイッスラー展以来です.

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今回は副題が『日常を描く-風俗画にみるヨーロッパ絵画の神髄』となっています.ルーヴル美術館の膨大な収蔵品のうち,西洋の画家たちが画題を宗教や歴史から人々の生活にシフトし始めた後の作品を集めて展示されています.全体の構成は以下.

プロローグI 風俗画の起源
プロローグII 絵画のジャンル
1章 「労働と日々」-商人,働く人々,農民
2章 日常生活の寓意-風俗描写を超えて
3章 雅なる情景-日常生活における恋愛遊戯
4章 日常生活における自然-田園的・牧歌的風景と風俗的情景
5章 室内の女性-日常生活における女性
6章 アトリエの芸術家

中世からルネサンス期にかけて,西洋絵画の画題としてもっとも重視されたのは宗教画や歴史画であり,肖像画がそれに続きますが,それ以外の対象は一段低いものとみなされていたようです.しかし,絵画の起源を辿ると,古代にはすでに無名の人々の営みが石灰岩等に描かれています.キリスト教の権威主義や貴族社会の階級化が進む中で顧みられなかった年月が長かったとはいえ,そうした人間本来の日常を見つめることこそ絵画の原点だという認識から,この展覧会はスタートします.

一日の時間の大半を労働に占有されていた時代,描写の対象はまず農作業などに向かいます.しかしその後社会の多層化に対応して商人の日常なども描かれるようになります.さらに,当初素朴で外面的であった労働の描写は,その労働に携わる個人の内面描写へと変化していく様子が展示から窺えました.やがて視線は労働から離れた個人生活の情景へも向かっていきます.

ここではたとえば,「恋愛」やそれを一種のゲームとして愉しむような雰囲気を感じさせる絵画も見ることができました.長く人々を束縛した信仰から少し解放された時期であることがよく伝わってきます.一方で,あまり露骨なものは美しくはない.いつの時代でも同じだと思いますけどね.

その後,展示は自然の風景を画面に取り込んだものや,それまでほとんど絵画の対象とされてこなかった一般女性の日常の姿を描いた作品にフォーカスされていきます.また,舞台裏とも言うべき,画家たち本人の生活の場であるアトリエの描写も.

上のパンフレットにも掲載されているフェルメール『天文学者』は,本展の中核作品の一つであることは確かでしょう.天球儀に触れながら,自分の研究内容に関する考察を進めているらしい場面.まさに,時代の中心テーマが宗教からサイエンスにシフトしたことを端的に示しています.背後の壁面には旧約聖書に登場するモーセの絵画が掲げられています.これは,モーセが知識の象徴であることから科学者の態度を補強するという解釈がなされていますが,科学の世界に身を置きつつも,一見それと対立する概念のように見える宗教とも折り合いをつけているという見方もありうるように感じます.近現代において西欧知識人はまさにこうした態度を身につけてきたのですから.

フェルメールの他にもレンブラントやルーベンス,コロー,ドラクロワといった馴染みのある画家の作品もありますが,全体としては未知の画家の作品がほとんどで,地味な印象はぬぐえません.ちょっと「お勉強」的な展覧会で,西洋近代史を復習した感じでした.


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最悪想定する傾向はあるでしょうね.でも石橋叩いているだけの人生はつまらない.

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