映画:ナショナル・ギャラリー 英国の至宝

シネ・リーブル梅田.
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規模は大きくないけれど,ヨーロッパでも指折りの美術館と目される英国のナショナル・ギャラリー .その運営スタッフの活動を丹念に追ったドキュメンタリー映画です.監督はフレデリック・ワイズマン.

冒頭から,学芸員(キュレーター)の女性がこのギャラリーの運営方針について,上司に延々と自説を展開する場面が映し出されます.きちんとした英語でわかりやすいですが,私の英語力では結局日本語字幕を追うことになってかなりくたびれます.

視覚障害者に絵画を理解してもらうために,解説したい作品の構図がわかるような「モコモコの」-要するに輪郭が手で触れるような材料で縁取られた模擬作品を作り,それに触れてもらいます.視覚障害者たちは,言葉による説明を受けながらそれに触れ,作品の概要を把握します.

子供たちへの絵画入門イベントも行われていますが,伝えようとする内容は大人にも通用するもので,子供だからといって手加減しないのは西欧風です.また,日本の美術館では若い人が展示作品の模写をしているところをほとんど見たことがないですが,ナショナル・ギャラリーでは常設展は基本無料ということもあってか,模写中の人が何度か映りました.

この美術館の所蔵作品は新しいものでも1900年(ジョットからセザンヌ)までということで,20世紀の作品は所蔵していないようです.このドキュメンタリーに登場する作品は,ご当地ということもあってターナーが目立ちました.

作品へのライティングも,大がかりな装置と光度計を使って綿密に行われます.作品のレイアウトも,作品と美術史に関する高度な知識と,独自の解釈のバランスを保って決定されます.キュレーター同士で意見の相違があるのは当然で,それを埋めるための議論がまた長々と描写されます.

そして,何といっても圧巻は作品の修復作業です.退色したり傷が入ったり,あるいは過去の誤った修復作業によって改変された作品は,最大限の科学的根拠をもって修復されます.しかし,そうした努力をもってしてもなお,後世の評価でその修復が間違っていると判明するかもしれない.その可能性を常に考慮した上で,「われわれの修復は,100%元に戻せることが原則です」という言明にかれらの仕事の困難と誇りを感じました.

上映時間が3時間に及ぶ大作です.議論の場面も多く,最後まで集中して見通すのは大変でしたが,美術館・博物館のキュレーターというのはこういう仕事をしているのかと,あらためて認識することができました.

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最悪想定する傾向はあるでしょうね.でも石橋叩いているだけの人生はつまらない.

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