フェルディナント・ホドラー展

兵庫県立美術館.

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19世紀末スイスの画家ホドラー.この時期の西洋絵画の大きな潮流の代表格が印象主義であるとするなら,それとは明確に異なったもう一つの流れが象徴主義だと言えるでしょう.その象徴主義の影響を強く受けた一人がホドラーです.

若い頃の『自画像』などの作品を見ると,写実から出発したことがわかります.強い光線を求めて南欧へ向かったのも,この時期の画家特有の行動だったと思います.それらはその後のホドラーの画業を強く支配したようには見えませんが,力強い輪郭や,特に風景画について言えることですが,対象の形態をコントラストを強調した面で構成する傾向など,初期の遍歴によるところが大きいと感じました.

その後,パンフレットに採用されている『感情III』にみられるように,互いに少しずつ異なった形態を反復させた構成をとることによって,様式の中に生き生きした律動を取り込むことへの挑戦を始めます.これに先だって対をなす『オイリュトミー』では,老いた5人の男たちが左方へ向かって歩む姿が描かれました.共通するのは生と死が二律背反ではなく,たとえば恍惚を示す女性の姿態と表情の中にそれらが不可分に存在するかのように描かれることです.

ホドラーの描く人物では,肌の上にできる影が青または暗い緑で描かれるのが大きな特徴です.これがどこか痛々しく,若い女性を描いても,そこには死の影がまとわりついているように見えます.19世紀末とはこういう気分だったのかなと思わせるようなところがあります.

ホドラーの絵画を観ながら,この同じ兵庫県立美術館で10年以上前に開かれたクリムト展のことを思い出していました.同じ象徴主義芸術家として知られるオーストリアの画家で,ホドラーとはほぼ同時代.両者とも晩年に壁画制作に没頭しました.抽象的な観念を具体的な事物を通して表現し,それを多くの人々の間で共有したいという時,彼ら象徴主義芸術家の作風がよくフィットするのでしょう.本展では,チューリヒ美術館の吹き抜け壁面を飾る『無限へのまなざし』のための習作のいくつかを見ることができました.

ホドラーは20歳ほど年下の女性との間に一子をもうけますが,その女性を若くして癌で亡くします.死去直後の遺体を描いた絵も展示されていましたが,こうしたところも,クリムトとの精神的共通性があるように感じます.

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