やっぱりジャズが要る

神戸でフォーレのレクイエムを聴いて以来,家でも久しぶりに何度か繰り返してコルボのCDを聴き直しました.もちろん前回書いたように絶美な演奏で,いつまでも何度でも聴きたい気になります.しかし本当に何度も聴いていると,さすがにその穏やかきわまりない世界にはいつまでも住んでいられないと感じてきます.こうした安息を必要とするまでには,私はまだもう少し時間があるのかなということを再認識しました.

特にそのことを意識したわけではなかったと思うのですが,CDラックから取り出したのがこれ.フィル・ウッズがヨーロッパの腕利きリズムセクションと組んで1968年に録音したアルバムです.


アライヴ・アンド・ウェル・イン・パリス [HQCD]
ジャズ
1. And When We are Young
2. Alive and Well
3. Freedom Jazz Dance
4. Stolen Moments
5. Doxy


『アライヴ・アンド・ウェル・イン・パリス』は「パリでなんとかやってるよ」くらいでしょうか.以前にも書いたように,1940年代から50年代にかけて興隆ををみたモダン・ジャズですが,60年代に入るとロックにポップ・ミュージックの王座を奪われ,衰退の一途を辿っていました.ジャズ・ミュージシャンは失業し,多くは転職したりしましたが,志ある者は演奏機会を求めて渡欧しました.

パーカー直系のビバップ・アルト奏者であるフィル・ウッズもその例に漏れず,ヨーロッパでもジャズに理解のある聴衆が多いフランスへ渡ったのが1968年のことでした.そして優秀なリズムセクションを集め,ヨーロピアン・リズム・マシーンとして最初に共演したアルバムが本作というわけです.『アライヴ・アンド・ウェル・イン・パリス』というのはファンや他のジャズ・ミュージシャンに対する近況報告代わりのあいさつのようなものですね.

しかし演奏は大変な熱気に溢れていて,「なんとかやっている」というようなレベルではありません.ここにはモダン・ジャズのメインストリームを歩んできたウッズの矜持が表明されていると思います.技術がしっかりしている上に柔軟性のあるリズムセクションをバックに,ウッズのアルトはときにフリーキーに狂いつつ情熱的なフルトーンで鳴り渡ります.1950年代には,代表作『ウォーム・ウッズ』に聴かれるようにスタンダードを抑制的に演奏することも多かったのですが,ここではメタリックともいえるほどギラギラした音色とフレージングで聴き手に迫ります.

アルバム全体で5曲,しかも最後の5.はクロージングテーマ的な短い演奏なので,まあ4曲と言っていいでしょう.いずれも長尺で,アドリブで言いたいことを言いきってしまおうという強い意志が感じられます.やや重たいテーマから始まるものの,カルテットのスリリングなやりとりが痺れる1.,ハードボイルドな表題曲2.不安定なテーマメロディにこの時代の香りが濃厚な名曲3.ジャズマン・スタンダードと言えるオリバー・ネルソン作の変形ブルース4.とどれをとっても緊張感あふれる快演が続きます.

ネガティブな状況に対しても不屈のジャズマン・スピリット.聴くと元気が出ますね.ウッズはこの時代のジャズマンとしては長命で,80歳をすぎて存命のようです.さもありなん.

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最悪想定する傾向はあるでしょうね.でも石橋叩いているだけの人生はつまらない.

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