ホイッスラー展

1834年アメリカに生まれ,パリで絵を学んだあと英仏を往来して活動したホイッスラーの作品展.京都国立近代美術館.


20141103_0.jpg


「芸術は,物語や教訓を伝えるようなものであってはならない」というホイッスラーの言葉自身が,その唯美主義を端的に表しています.印象派芸術が開花する19世紀後半に先駆けて,その到来を予言したと言っていいように思います.絵画の本質はあくまでも色と形であって,史実や宗教説話などの伝達を目的としてきた過去の美術は見直されなければならないと.

自身の作品のタイトルとしてしばしば音楽用語を使用したのも,そうしたホイッスラーの芸術観を反映しています.シンフォニー(交響曲),ヴァリエーション(変奏曲),アレンジメント(編曲)に始まり,代表作にはノクターン(夜想曲)の名が冠せられています.純粋に音の響きの美しさを追求した,後の印象派音楽の主張と呼応するかのようです.

作品は油彩絵画のみならず,水彩絵画の他にもエッチングやリトグラフといった版画も数多く,また『青と金色のハーモニー:ピーコック・ルーム』と題された室内装飾の映像展示もあって,ホイッスラーの表現手法が多岐にわたっていたことを覗わせます.

この『ピーコック・ルーム』の強い東洋趣味や,パンフレットに使用されている『白のシンフォニー No.2:小さなホワイト・ガール』が手にしている団扇,染め付けの入った磁器が置かれていることなどからも明らかなように,ホイッスラーもまたこの時期西欧を席巻したジャポニズムの影響を強く受けています.

とは言っても,キモノを着た女性や,陶磁器・扇といった小物が配置された作品は,われわれ本家の日本人から見るとどこか不自然で,無理矢理感が否めません.過去の西洋絵画に伝統的な,様々な象徴を画面内に配して芸術に“意味”を持ち込む手法を嫌ったホイッスラーでしたが,こうしたエキゾチシズムは普遍性を持ちませんね.

しかし,広重や北斎の浮世絵からその構図や色使いの斬新さを学び取ったあとの作品群は,まさに近現代美術へと一気に昇華された感があります.『ノクターン』作品群に見られるシンプルな構図と,数は少ないが精妙な色使いとで,見事な抽象性=普遍性を獲得しています.

19世紀末の大きな芸術運動の先駆けとしての試行錯誤を追える作品展.その後の美術・音楽に関心のある人なら感銘を受けることが多いと思います.

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

choby

Author:choby
最悪想定する傾向はあるでしょうね.でも石橋叩いているだけの人生はつまらない.

カレンダー
06 | 2017/07 | 08
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
リンク
FC2カウンター