ジャクリーヌ・デュプレ 『ドヴォルザーク・チェロ協奏曲』

N響神戸公演で聴いたドヴォルザークのチェロ協奏曲.CDはやはりジャクリーヌ・デュプレでしょうか.


ドヴォルザーク:チェロ協奏曲
クラシック音楽


ニューヨークに招聘されたドヴォルザークがホームシックにかかり,チェコへの望郷の念を痛切に綴った曲です.チェロのソリストが意図して「表現」せずとも曲自身が雄弁に語ってくれる作品.しかしデュプレはそこにさらに自身の情念を全力でぶつけます.

これほどの切実感をともなった演奏はそうざらにあるものではありません.演奏者が自分の演奏を芸術作品として成立させるためには,曲と自分の表現を相対化することが必要だと思います.しかしここでのデュプレの演奏からは,完全に曲と演奏者が一体化し,どこまでが楽譜に書かれた部分で,どこからがデュプレが表現した部分なのかがわからなくなってしまうほどの没入が感じられます.これはもう芸術作品というより,宗教的没我に近いといっていいのではないでしょうか.

十代でトップ・チェリストとなり,100年に一人の女流といわれたデュプレ.その一方で,早熟の天才にありがちな自我の暴風に苦しんだことがその振る舞いや書簡で伝わっています.私には,自分が世界と融和できた素朴な時代を狂おしいまでに懐かしむデュプレが,ボヘミアへの痛切な望郷の念を“歌”に託したドヴォルザークと重なります.

デュプレのその後の運命は過酷きわまりないものでした.この録音の1年後,デュプレは指先の感覚がおかしいことに気づきます.難病の多発性硬化症にかかっていました.そのさらに2年後,演奏が不可能となり28歳の若さで引退を余儀なくされ,1987年に42歳で亡くなりました.このディスクは,結果的にデュプレ絶頂期の痛々しい記録となりました.

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