EVは町から外へは出られない...のか? -続き

今のところ,EVで500km連続走行したいと思えば,日本円で900万円以上を支払う必要があるというのがテスラ・モーターズの回答です.優れた製品ではありますが,これを購入できるのは先進国でも裕福な部類に属する人たちでしょう.このままではフェラーリやランボルギーニとまではいかなくても,高級車ブランドとしての価値はあるが大きな普及はせず,社会に対する影響度は小さいままに留まってしまう可能性があります.

EVが普及を期待されるのは,非常に荒っぽく言えば内燃機関の熱効率がせいぜい40%であるのに対して,主力である火力発電所の平均熱効率が60%程度あることにより,電気から機械エネルギーを取り出すときのロスを考慮してもその方が効率が高いと評価されているためでしょう.EVにしたからといってCO2排出がセロになるわけではなく,あくまでもこの効率の差が省資源ひいては温暖化ガス排出削減につながると考えられているからです.同じ化石燃料を燃やすにしても,発電所で燃やして作った電気エネルギーを使う方が省エネで環境負荷が小さいからです.

この観点から政府・自治体も税負担の軽減や補助金,インフラ投資で普及を後押ししようとしているわけで,それが特定の自動車メーカーのビジネスを支援するような形になるのは本来の趣旨ではありません.公的支援に乗ってEVビジネスを展開するからには,高級車ブランドで留まるようなビジネスモデルは許されないと思います.現在走っているガソリン・ディーゼル車の多くが代替されるようなことにならない限り,有効なカーボン排出削減も大気環境改善も望めません.

長距離を走ろうとするとそれに応じて電池の搭載量がどんどん増えるので,相当大柄で高価な車体が必要となる.これをガソリンエンジンを積んだコンパクトカー並にしようとすると,電池のエネルギー密度は現在の少なくとも数倍くらいにまで持っていくことが求められます.これはなかなか難しい.できない,と断言はできませんが,それがいつできるという技術予測は極めて困難です.

EVにはさらに,大容量の電池を短時間で充電しようとするとそれに応じた設備が必要という課題があります.200Vの電源が使えれば一晩で満充電にできても,万一100Vであったら充電時間は一気に数十時間に延びてしまいます.一泊二日のドライブツアーに出て,2日間で往復1000kmを走るためには宿泊地での充電に気を遣わなければなりません.500km無充電で移動して終わりではないのです.

充電のためにいちいち停車せず,走りながら電力供給を受けられないか? それならあえて巨大な電池を抱いて走らなくていいという発想はありえます.現在,非接触充電技術が研究され,すでに実際にEVに載せた電池を充電できるところまで実験は進んでいます.将来,たとえば時速80km以下なら走行中でも非接触充電ができるような技術が実現すれば,高速道路の1レーンを充電レーンとして整備し,充電が必要になったEVはそのレーンで充電を受けながら走行を継続できるようにするという構想です.

もっとも現在はまだ位置決めをかなり正確にしないと充電効率が落ちるといった課題があるようで,高速で移動しながらの非接触充電技術の実現はまだまだ先でしょう.またかりにそれが利用可能となったとしても,何千kmにおよぶ高速道路の改修という莫大なインフラ投資が必要であり,国家予算の使い道として適切かどうか,厳しい吟味に晒されることになります.

こうしてみると,EVの持っている特質は,今のところみんながそれに乗って長距離移動するというところまでは至っていないというのが率直な感想です.高速道路などを使って1日数百kmの移動をする道具として,購入対価や社会的コストが使用者と社会の受け取る便益に見合うところまでは,まだもう少しかなあと考えます.
(まだ終わらずに続く)

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No title

お邪魔いたします。

以下私個人のたわ言としてお読み流し下さい。
長文申し訳ありません。

自家用車って、どう言い訳しても、それを保有して
乗りまわしている段階で、環境破壊をしまくっていると
私自身がそう思っております。
百歩譲って、通勤や、家族を病院へ連れて行くなどの
目的がある場合は仕方がない。
としても、公共の交通機関が充実しているなら、そちらを
使うべきでしょう。環境を破壊しないことを考えるならば、
ですよ。

ましてや、私なんかもそうなんですが、楽しみのために、
ガソリンを燃やして、空気汚して、騒音立てて、道路を
傷めて、る人間に環境を語る資格はないと思ってます。

今、ハイブリッド車を買ってる人も本当に環境問題を
考えて、というよりはファッション、ですよね。
製造段階、廃棄段階で、環境に負荷を与えるという
こともハッキリしているのに、何となくエコだから、と
いう風潮で買ってる人が殆どです、よね?
(すみません、決めつけて)

また、電気自動車、ですが、
もし、完全に環境に負荷を与えず、コストの安い、例えば
極端な話、車両価格100万で、フル充電に5分、航続距離
1000キロ、の電気自動車が出た、としても私は買いませんね。

移動手段としては今のガソリン車より優秀でしょうが、電気
自動車って運転して楽しいんでしょうか。
何かやっぱり、シリンダーの中でガソリン爆発させて、ピストン
動かして、その力でドライブシャフト回して、後輪動かして、
ギヤ選んで、ってその一連が楽しいように思います。

デジタル写真が出始めた時に、従来の写真に対するこだわりを
持った人が、否定的な意見を仰ってたことがありました。
今は、そんな議論はどこかへ行ってしまいましたね。

その流れでいうと、もしかして、完全なエコカーが実現したら、
今お話した、ガソリン車の魅力もどこかへ行ってしまうのかも
知れませんが、やっぱり写真とは少し違うような・・・。

デジタルオーディオとアナログレコードの差の、もっとダイレクト版
のような感じがします。

日々車を運転しながら、漠然と考えていることです。
地球に申し訳ありませんと謝りながら、贅沢させてもらってます。
脈略のないことをダラダラと書いて本当にすみませんでした。
ご容赦ください。

続編楽しみにしております。
















Re: No title

まんさん,ご意見ありがとうございました.
やっぱり内燃機関が好きで乗っているというところはありますよね.

ただ,ここにはいつも情緒的なことばかり書いているのにナンなのですが,
今回のEVの話題に関しては,一応好き嫌いはできるだけ排除して書いてみようと
思っています.環境負荷のことを書いているのは,世の中ではそれがEVの
存在理由の一つに挙げられているからでして,だからといって不便を我慢して
でもモノとして未完成なものに突っ走るのはどうなのかという立場です.

上手くまとまるかどうかわかりませんが,次で終わりにするつもりです.
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choby

Author:choby
最悪想定する傾向はあるでしょうね.でも石橋叩いているだけの人生はつまらない.

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