ブラームス ピアノ協奏曲第2番

先日聴いたブラームスのピアノ協奏曲第2番.この曲にはいくつかの特異な点があると思います.

まず協奏曲なのに4楽章あります.第1楽章はホルンの明るい旋律に導かれて始まりますが,ピアノとオーケストラの緊密な対話を経て次第に緊迫度を増し,最後は大交響曲のフィナーレのようなスケール感で聴衆を圧倒します.それが終わって,さて緩徐楽章が始まると思っていると,いきなり崖っぷちで意思決定を迫られているような深刻さで第2楽章が始まって驚かされます.

規模こそ及びませんが,その緊迫感のため印象の強さは第1楽章に勝るとも劣らないものがあります.こういう点も協奏曲の枠からはみ出したところがこの曲にはあります.そして第3楽章.ピアノ協奏曲なのに,この楽章での主役となるのはチェロなのです.穏やかで美しいメロディが奏され,しばらくして入ってくるピアノもチェロの伴奏のような扱われ方.

だいたいブラームスという人は,そのヴァイオリン協奏曲でも緩徐楽章では主題をオーボエに担当させ,有名ヴァイオリニストに「いい気分はしない」と言わしめた作曲家です.まるで,「ただの演奏家ふぜいをそんないい気分にさせてたまるか」とでも言いたげな構成です.皮肉屋だったとも言われるブラームス.もしかしたら本当にちょっとした意地悪かもしれません.ただし,このピアノ協奏曲2番第3楽章に関しては,このメロディをピアノで効果的に表現するのは難しく,チェロに弾かせるのは十分な必然性があると思います.

その第3楽章も,単に懐かしいとかゆったりしているといった,第1・第2楽章の緊張を緩和するために挿入された生やさしい音楽ではなく,途中では「涙も涸れ果てた」といった感慨にうちひしがれる場面もあります.緩徐楽章だからと言って,決して聴衆の精神の運動を停止させるようなところはありません.

このようにシリアスな3楽章が続いた後,いったいこれがどう解決されるのかと緊張して最終楽章を待っていると,そこで始まるのはやけに明るい雰囲気の音楽です.弾むようなリズムの上をスキップするように踊るメロディ.しかし私はいつもここで,何か肩すかしを食ったように「今までの3楽章はいったい何だったんだ」という気分になります.真剣な質問をはぐらかされたような感じと言ったらいいでしょうか.

この曲は録音で何度も何度も聴いていますが,何回聴いてもここは納得がいきません.第4楽章がもう少しでいいから音楽的に充実したものであれば,この曲は「ピアノ付き交響曲」としてブラームスの代表作になったのではないかと思います.もっとも,クラシック音楽のガイド本やCDの解説を読んでも,ここが弱いなんて書いてあるのは見たことがありません.他の人にはきっとこれで説得力があるのでしょう.

ブラームスほどの作曲家ですから,私の言っているようなことも十分承知の上だったのでしょう.「そんなモンじゃないんでね」と向こうでペロッと舌を出している彼の顔を想像してみたりします.

有名曲ですし,もちろん大家の演奏がたくさん録音されています.私は音がいいのでこのCDをよく聴いています.冒頭のホルン,すごく上手いしホールの響きもすばらしい.ちょっと聴きでシャープな感じの録音ではありませんが,音色には滋味があり,低域の豊かさと解像度がちゃんと両立しています.


ブラームス:ピアノ協奏曲第1番&第2番
クラシック音楽


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