モハベの少女が問いたかったこと

10年以上前になります.ドラマーのブライアン・ブレイドのアルバム「Perceptual」のジャケット写真に深く感銘を受けました.まだ10代とおぼしき少女が,深いまなざしでこちらを見ています.その表情は若干の警戒感を示しつつも堂々として威厳に満ち,こちらに何かを問いかけようとしているかのようです.この写真はホンモノです.そこらへんのモデルを連れてきて撮れるような写真ではありません.


Perceptual
ジャズ

Shadow Catcher: The Life and Work of Edward S. Curtis
書籍

胸打たれてCDのブックレットをあちこち見てみると,この写真の出典は「Shadow Catcher」という本(著者:ローリー・ローラー)であることがわかりました.19世紀末から20世紀初頭にかけて,ネイティブアメリカン(インディアン)の人々の暮らしをペンとカメラで記録し続けたエドワード・カーティスの足跡を辿る内容のようです.すぐに入手して探してみると,70ページにこの少女の写真が以下のキャプションとともに掲げられていました.

“The questioning eyes of this Mojave girl of the Southwest seemed especially eloquent to Curtis.”

この時代,すでにネイティブアメリカンの人たちは西部地域のあちこちに設けられた居留地(リザベーション)に追いやられ,そこで細々と,しかし誇りをもって彼らの先祖伝来の文化を継承して生きていたのでした.モハベ族のこの少女もおそらくそうした抑圧状況の中で育ち,憤りを感じていたことは想像に難くありません.カーティスはそのような境遇を強いている側にいる人間であると同時に,自分たちの伝統文化に敬意を払っていることもこの少女にはわかっていて,一種の親近感もあったのではと推察できます.そのカーティスにポートレートの撮影を請われて,少女らしい羞恥や,差別に対する告発,個人的な親近感などが心をよぎりつつカメラの前に立ったのだろうと想像します.

この写真がカーティスのどの著作に掲載されていて,カーティス自身がどのようなコメントを残しているか,私は知りません.しかしおそらくはローラーのキャプションのように,カーティスはこの少女の表情に強く感銘を受けてシャッターを切ったに違いないと思います.それが子供向け伝記作家ローラーの目に留まり,その著作を読んだブライアン・ブレイドがやはり強い印象を受けて自分の作品のジャケットに使用した.そしてそれを見た極東の一人のジャズファンがカーティスによってこの写真が撮影されてからおよそ100年後になって深い感銘を受け,これを書き留めているというわけです.

この少女の問いかけている(ように見える)ことの中身は,この写真と出会う人それぞれに異なったものになるでしょう.もはやこの少女の問いは彼女自身から離れ,文化や出自といった属性に依存せず,言葉すらも介さず直接こちらの心を揺り動かす普遍性を持つに至っています.西暦2014年の年初,あなたは「その」問いをどう聞き,どう答えますか?



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最悪想定する傾向はあるでしょうね.でも石橋叩いているだけの人生はつまらない.

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