25年目の弦楽四重奏(映画)

先日,ティーンエイジャー達によるベートーヴェンの弦楽四重奏曲第14番を聴いた印象を記しました.

今井信子 presents エール弦楽四重奏団

まさにその14番がプロットの中核をなす映画が今公開されています.神戸国際会館で観ました.

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ニューヨークを本拠とする弦楽カルテット「フーガ」.結成25年目の記念公演を目前にして,彼らの精神的支柱であるメンバーのチェリストが突然の病によって引退宣言します.そのことによって広がる波紋.種々の問題が噴出し,カルテットは急速に崩壊に向かいます.

チェリストの病は癒えるのか? カルテットは維持されるのか? 記念公演は中止せざるをえないのか? 

カルテットが社会的存在である以上,実施すると宣言した記念公演を内的な要因でそう簡単にやめるわけにはいきません.この映画のプロットを追いながら,こういった状況は彼らだけでなく,実に誰の人生にとっても起こりうることだと観客は気づきます.

この映画では,生じた問題の解決がなされたかどうかは結局明示されません.おそらく何も解決しなかったのでしょう.しかし彼らは綱渡りのように何とか自分たちに折り合いをつけ,カルテットを再構築して最後は記念公演で演奏します.人生とはおおむねそういうものだし,成熟した人間とはやはりそういうものだとでもいうように.

この14番は,ベートーヴェンによってアタッカで,すなわち楽章間の切れ目なく演奏することが求められています.このことがもたらす重要な点は,演奏によってカルテットの各楽器の調弦が次第に狂ってくるという不可避な現象を受け入れ,それと格闘することを必然的に求められるということです.立ち止まって調弦し,すべて一からやり直すということは許されません.

この14番という曲は,まさに生きていくということのアナロジーとして存在する.そのようなメッセージが伝わってきました.

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最悪想定する傾向はあるでしょうね.でも石橋叩いているだけの人生はつまらない.

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