チョン・キョンファ 15年ぶりの日本公演を聴く

どうしても一度生で聴きたかったチョン・キョンファのヴァイオリン.15年ぶりの来日で願いが叶いました.兵庫県立芸術文化センター大ホール.

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今回の来日では国内5会場で公演の予定で,プログラムの数は3つ.芸文センターではプログラム2が演奏されます.曲目は以下.

モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ第35番 ト長調
プロコフィエフ:ヴァイオリン・ソナタ第1番 ヘ短調
バッハ:シャコンヌ
フランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調

まずはモーツァルト.チョンは演奏の直前,自分の楽器を裏返しに両手で捧げ持つようにして精神を集中させます.演奏が始まって一聴,これがモーツァルトかと表現の濃厚さに圧倒されます.主部がト短調であることもあってモーツァルトらしい愉悦感はほとんど感じず,厳しい緊張感に貫かれています.

プログラム1と3ではホ短調の28番を演奏しており,やはりこの作曲家の作品を演奏するにも,チョン・ワールドが反映されやすいだろうと思える曲を選んでいることに深く納得.演奏中,フレーズの合間に時々キッと観客席の方を見るのが,かなりこわかったです.

続いてプロコフィエフ.私にとっては初めて聴く曲ですが,プロコフィエフのチェロ・ソナタは愛聴曲なので大変期待していました.厳粛で幻想的な曲です.第1楽章と第4楽章の弱音で演奏される音階風のメロディは「墓場にそよく風」だとされていますが,音階を上がったり下がったりするだけでこれだけの劇的効果を与えうるのです.音楽と演奏の力を思い知る瞬間でした.

ここまでが前半.休憩をはさんで,シャコンヌを弾きます.私にとっては,戸田弥生,ヒラリー・ハーンときて今年3回目のシャコンヌです.特に意図したわけではありませんが,こんなこともあるのですね.

演奏を聴く前まで,この人ほどバッハのこの究極の名曲を深々と解き明かしてくれる人はいないだろうと思っていました.しかし聞こえてきた音楽は,驚くほどあっさりしたものでした.テンポはどちらかというと速かったように思います.そう感じたのは,先月にゆったりとしたハーンを聴いた後だからかもしれませんし,1月に熱っぽい戸田を聴いたせいかもしれません.

いずれにしても,私にはこの曲に関して,ここだけは聴かせてくれというポイントがいくつかあって,戸田もハーンも十分にそれに応えてくれました.しかし今回のチョンの演奏には戸田の渾身,ハーンの清冽に比すべき印象が持てず,前にも書いた「最後まで聴くと一生を生ききった感」がありませんでした.

もちろん,私の知らないシャコンヌがあるはずで,これだけの大家の演奏が悪かろうはずがないと思います.ただ,私自身の未開発の感情を刺激することはなかったというのが正確なところなのでしょう.

さて,リサイタルの最後は私も大好きなフランク.この優美な曲を,チョンは本当に夢見るように弾いてくれました.こういったフランス音楽(フランク自身はフランス人ではない)はあまりチョン・キョンファのレパートリーに似つかわしくないようなイメージがありますが,今回の来日公演のすべてのプログラムに配置されていて,力の入れようが察せられます.年齢を重ねた大ヴァイオリニストの新境地なのかもしれません.

アンコールはシューベルトのソナチネを2曲.いかにもクールダウンという曲選択でした.


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最悪想定する傾向はあるでしょうね.でも石橋叩いているだけの人生はつまらない.

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