ヤコブセンの全集本

懐かしい本を入手しました.

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ヤコブセン全集
書籍

ヤコブセンはデンマークの詩人・小説家です.夭折したこともあって北欧作家の中ではイプセンやストリンドベリのようには知られていませんが,少なくとも私にとっては20歳前後の自分自身の心象風景を強く思い起こさせてくれる作家の一人です.

この作家のことは最初リルケの本で知りました.「自分にとって必要な書物はそんなにはないが,ヤコブセンの本はその少数のひとつである」というようなことが書かれていて興味を持ちました.大学の図書館で探してみると,山室静訳1975年出版のこの本が見つかりました.

冒頭の「モーンス」の書き出しを読み出して少し驚きました.身近な植物に関する描写が執拗と言ってもいいくらいの精緻さを持っていて,それが大変に魅力があります.巻末の解説を読むと,大学では植物学を専攻したことがわかって合点がいきました.

ヤコブセンの父はたたき上げの実務家,しかし母は南方からきた夢見がちな人であったということで,この組み合わせが詩人を生むというのはトーマス・マンの小説「トニオ・クレーゲル」そのままです.ヤコブセンは実際に自然科学と文学の間を行き来した人のようで,「種の起源」のデンマーク語訳なども手がけたということです.

しっかりした箱付きのハードバックで持って歩くには不向きな本でしたから,図書館に行って棚から引っ張り出しては少しずつ読んでいました.私が在学中,誰かが借りていたことは一度もなかったと記憶しています.何十年も忘れていましたが,ネットで古本が探せる時代になってアマゾンで検索をかけたりしていました.絶版になって久しく,時折発見できても大変に高値がついていたりして手が出ませんでしたが,今回やっと入手できたというわけです.内容は多くを忘れてしまっているので,また昔のように少しずつ読み進めてみたいと思います.


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Re: 生涯で一番大切な本

お返事をするのが遅くなり申し訳ありませんでした.メールを下さりありがとうございました.何度も読ませていただきました.

このような親密なコメントをいただくことができ,日々の雑記を書きとめておくのも悪くないと改めて思った次第です.大切な本を失われたことは大変お気の毒でしたが,それが契機となって私はトーマス・マンやヤコブセンにこれほどの愛情と敬意を抱いておられる方とメッセージの交換ができたわけです.申し訳ありませんが,私にとってこれは僥倖と呼ぶほかありません.

私自身は,文学に惹かれながらもテクノロジーの分野で生計を立ててきた者で,特に詐欺師に間違われることもなくここまできました.私がそのような種族に属していないことは明らかですが,最近になってそこらに置き忘れてきた-または意図的に手放してきた-ものをもう一度手に取ってみたいような気がすることがあります.ヤコブセンの本を入手したのもどこかにそんな気持ちがあったからかもしれないなと感じます.

1975年版の山室静訳「ヤコブセン全集」,いつかまた手に入る日が来ると思います.失礼を顧みず申し上げますが,それまでは思いを募らせる期間とお考えになるのはいかがでしょうか.
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最悪想定する傾向はあるでしょうね.でも石橋叩いているだけの人生はつまらない.

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