ティーレマン+シュターツカペレ・ドレスデンのブラームス(続き)

演奏は前半が交響曲第3番,後半が第1番でした.もっとも,この組み合わせなら誰が振ってもこの順番になるでしょう.第1番を前半に演奏してしまったら後半に何をやるか,選択に困るところです.

私は第3番第1楽章の最初の音が出るのを少し身を固くして待っていました.なんと言ってもあこがれのオケです.そしてそれは私の期待を超えるものでした.私の座っていたホールの後から3列目くらいの席に,厚く濃い響きが届いてきました.座席の位置で言えば,やや全体の分離が良くない場所だったかもしれませんが,すぐに気にならなくなりました.

ティレーマンに従順にまとまって渋みのある音を出している弦楽器に対して,金管や木管は各奏者それぞれが一国一城の主的な存在感です.全体として厚みはありますが,低音楽器が特に強く聞こえてくるということはありません.

第3番はブラームスの交響曲としてはもっとも安心して聴ける曲でしょう.ブラームスの特質・美点がもっとも良く出た作品だと思います.それに対して第1番は,第10交響曲と言われることもあるくらいベートーヴェンを意識した作品で,逆に言えばブラームスとしてはかなり無理をした曲なのでしょう.それだけに完成には20年を要し,第1楽章などは曲想とともに,まさに苦闘を感じます.

休憩が終わって後半になり,いよいよその絶対音楽が始まります.ティンパニが刻むリズムに乗ってスタートする第1楽章には歌えるようなメロディはなく,第4楽章で克服されるべき困難との苦闘がいまだ解決されないまま延々と展開されます.私が持っているこの曲のどのCDの演奏よりもダイナミックで,句読点をはっきりさせるような場面が随所にありました.

クラシック音楽では近年特に「楽譜に忠実」であることが尊重され,20世紀中盤までの大指揮者による「解釈された」演奏は反省の対象とされてきました.昔に較べれば今はあっさりした演奏が多くなったのではないでしょうか.しかしティーレマンはそんな声にはおかまいなく,明確に「ここを聴け」と伝えてきます.前世紀の大指揮者達への先祖返りでしょうか.

そして第4楽章.ホルンのソロに導かれて出てくる有名な第1主題.ここも間の取り方が大きく,まったく音の鳴っていない時間に,「たのむから誰もここで咳をしないでくれ」と祈ることができるほどでした.そして最後のコラール.空から祝福の声が降ってくるようで,思わずウルっと来て鳥肌が立ちました.

おそらく一生ものの体験をしたと思います.アンコールはワーグナーの曲でした.これもお得意ですね.ティーレマンは来年も今度はウィーンフィルを率いて日本にやって来るそうです.ぜひともまた聴きたいものです.

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最悪想定する傾向はあるでしょうね.でも石橋叩いているだけの人生はつまらない.

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