パリのズート・シムズ

先週の土曜(2月12日),飲み会の後,仲間と一緒に堂山町のジャズバー・ムルソー(Meursault)に寄りました.

このバーは,JBLのスピーカーをMcintoshのプリとJobのパワーの組み合わせて鳴らしています.Jobのパワーアンプを選んでいるところが,オーナーの見識でしょう.ブランドイメージに惑わされない,狙いの音がわかっているプロならではの,シロウトにはなかなかできない機種選択と言っていいのではないでしょうか.音源はもちろんLPです

私はそれ程飲める方ではないので,ウォッカソーダにライムを入れてもらってちびちび飲んでおりました.しばらくすると,ズート・シムズの「ダウン・ホーム」がかかりました


ダウン・ホーム+6(K2HD/紙ジャケット仕様)
ジャズ

他の連中には勝手にしゃべらせておいて,こっちはスインギーな演奏に耳を傾けます.というか,どうしても耳がそっちへ行ってしまって会話ができないというコミュニケーション不全状態.

轟音ベースでジャズ史にその名を刻すジョージ・タッカーや,ジャズ界随一の強面バンド,ミンガス・ワークショップで不動のドラマーとしてならしたダニー・リッチモンド等のバックに支えられてズートのテナーは快調そのもの.

壁にはいかにもベツレヘム・レーベルらしい濃い緑単色のジャケットが掛けられています.うちで聴くより若干エッジが丸く聞こえるタッカーのベースラインを追いながら,そのジャケットを店の端から眺めるともなく眺めていると,かたわらのピアノの上に「ズート・シムズ・イン・パリ」のLPが立てかけてあるのに気付きました.


ズート・シムズ・イン・パリ
ジャズ


おー 思わず立ち上がって店の中を横切り,そのLPのジャケットを手にとってみます.CDしか持っていない私が初めて触るそのジャケットは,聞いていたとおり少しざらざらした素材の手触りです.おまけに表にはズートのサインが! 若いバーテンさんに訊くと,やはり来日時にオーナーがもらったサインだそうです.私のそぶりがあまり羨ましそうに見えたのか,バーテンさんが「かけましょうか?」と.もちろんお願いします.

「ダウン・ホーム」がズートの最高傑作といった意見はよく耳にしますが,この「ズート・シムズ・イン・パリ」はあまりそういった褒められ方をされているのをきいたことがありません.バックは全員フランス人で,みな誠実に演奏しているのですが,何しろ豪腕と繊細が自在に交替する「ダウン・ホーム」の超強力リズムセクションとは比すべくもありません.録音もこもり気味で,ただでさえやや弱いベースが遠く聞こえますし,ドラムスもバスドラの連発が耳にうるさかったりします.

しかし,というか,だからなのか,ズートの演奏はいつも以上に温かく,滑らかです.元々が鼻歌くらいのスムーズさでアドリブのフレーズが湧いて出てくるズートですが,キツくないバックを背にしつつ,アメリカ本土と違って十分なリスペクトをもって傾聴してくれるパリの聴衆を前に,アップテンポもバラードも自由自在.演奏をはじめるまで影も形もなかったはずのブルースも,いかにも朝飯前風に(朝酒か)ちゃんと2曲できてます.「ダウン・ホーム」あたりでは,さすがのズートも若干煽られ感があったのかもしれませんが,ここではリラックスしきっているように見えます.

自宅でこの人の演奏を聴きたいとき,最近ではほとんどの場合この「ズート・シムズ・イン・パリ」に手が伸びるようになっていた私ですが,ここのオーナーさんもまさにこのアルバムを持ってサインをもらいに行ったことを聞き,ひそかに(勝手に)仲間意識を持ったのでありました.

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

choby

Author:choby
最悪想定する傾向はあるでしょうね.でも石橋叩いているだけの人生はつまらない.

カレンダー
05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
リンク
FC2カウンター