大台ヶ原の紅葉を見にいく

ここしばらく実質的な休みがなかったので,このブログもすっかり放置状態でした.久しぶりの休日,秋を感じられるのはどこかと考えた時に,近畿地方で紅葉が見られそうなのは大台ヶ原ほぼ一択.実は私,長いこと関西に住んでいながらこれまで大台ヶ原に行ったことがありません.

遅くなると200台しか停められないビジターセンターの駐車場が一杯になるそうなので,私達にしては早起きして6:30出発.近畿道美原JCTから南阪奈道経由でR169へ.町中を抜けたあたりのLawsonで昼ご飯その他を調達して,Z4のルーフをオープン.空はずっと曇っていますが,それほど暗くありません.しばらく行くと道は吉野川沿いを遡行するようになります.川上村の大滝ダム周辺は,前走車がいなければなかなか楽しいワインディングロードです.

橋とトンネルを接続した長大なループを抜けると,すぐにK40との分岐点.ここから道幅は急に狭くなります.分岐から50mほど入ったところで前から丸太を何本も積載した大型トラックが来ました.すれ違いは到底無理.いきなり分岐点まで50mバックする羽目に.最初からこれでは先が思いやられると覚悟しましたが,結局大型車はこれ1台だけでした.

杉林に覆われて暗い急勾配の狭路を,Z4の前照灯を点けて駆け上がります.しばらく走ると,以前有料道路であったと聞く大台ヶ原ドライブウェイとなり,道幅も広がってほっとできます.高度はぐんぐん上がり,すぐに叔母峰峠到着.さらに進むと展望が広がり,ちょっと2014年秋に走った野麦峠の岐阜県側を思い出しました.

南側に大きく開けたスペースがあったので,Z4を停めて降りてみました.足下にくっきりとした山並みが見え,さすがに高度感があって爽快な眺めですが,時刻は9時を少し過ぎたところで気温は11℃.太陽は雲に隠れ,強い風が吹いています.寒いと思って妻も私もウールのセータ―を持ってきましたが,これは想定を超えてダウンジャケットが必要でしょう.ビジターセンターから最高点の日出ヶ岳(1695.1m)まで登ってみるつもりで来ましたが,大丈夫かな.

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大台ヶ原ビジターセンター駐車場に着いたのは9:40.さっきから大して時間が経っていないのに,風が止んだせいかまったく寒くありません.ほんの少しですが青空も覗くようになり,靴を履き替えて出発.まずは大台ヶ原山(日出ヶ岳)へ登ってみます.完璧に整備された登山道が,笹原の中に立つ針葉樹とブナやミズナラの美しい森の中に付けられています.

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歩き出してしばらくはまだ緑が濃く,日本有数の多雨地域ならではの苔に覆われた木々の幹を見ながら進みますが,やがて少しずつ色づいた広葉樹が見られるようになりました.

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薄日も射すようになる中,尾根上の分岐点まで来ると一気に展望が開けます.とはいえまだ多少湿度が高く,熊野灘がかすかに確認できる程度.条件が良ければその向こうに富士山まで見えることがあるそうですが,さすがにこの日はそれは望めそうにありませんでした.

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鮮やかな木々の葉色を見ながら木の階段を登りきると,日出ヶ岳頂上です.とてもよく整備された展望所が作られていました.ここで昼を食べたり,写真を撮ったり.時折陽が射すと,紅葉した木々の色が一気に彩度を増してさらに鮮やかに.遠くの山肌はパステル調に塗り分けられたようになっています.

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頂上にしばらくいて,下り始めます.分岐まで戻り,そのまま稜線上を正木峠,正木ヶ原方向へ.登山道の多くの部分は自然保護のために木道になっていて,歩きやすいのとやや視点が高くなって眺望の面でもプラスでしょうか. これだけ人が入ると,人工物の導入は仕方のないところでしょう.

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正木峠―正木ヶ原は,社会科や地理の教科書でおなじみ,笹原と立ち枯れたトウヒの林が続きます.青空の面積が広がってきたし,笹の緑と背景の紅葉で,昔から持っていた荒涼としたイメージはそれほどありませんでした.


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尾鷲辻まで来たら,もう13時でした.ビジターセンターを出たのが10時だったので,もう3時間が経ったことになります.ここからビジターセンターへは谷沿いの道を緩やかに下ります.登ってきた道と同様,美しい森を眺めながらいくつも小さな沢を渡ります.

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結局ビジターセンター駐車場に戻ったのは14:45.2時間半で戻ってこられると聞いたのに,4時間近くかかったことになります.相変わらず道草が多すぎですが,本当に久しぶりに羽を伸ばせた一日でした.

近現代絵画サロン@逸翁美術館

阪急電鉄や宝塚歌劇団の創業者である小林一三.逸翁美術館は当初小林の旧邸である雅俗山荘を改装して設立され,小規模ですがなかなか趣のある美術館でした.数年前に少し離れた場所に新しく近代的な美術館として新築され,今回和洋の近代絵画が展示されるというので初めて行ってみました.なお旧邸は現在,小林一三記念館として再公開されています.

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作品は20世紀中期のものがほとんどで,抽象的なものはなく,どれもわかりやすいものばかりでした.見た順に印象的な作品をメモすると,日本人画家ではまず白瀧幾之助『スイス風景(ルツェルン湖)』や中澤弘光『港内』.黒田清輝の外光表現の影響を強く受けています.熊谷守一『黄蝶と松虫草』は,明確な輪郭線で物の形の表現を極限まで追求して唯一無二.面はまったくの平塗りで描かれています.

長谷川潔は4点.エッチングの『野薊』と『若木』,メゾチントの『メキシコの鳩,静物画』と『オパリンの花瓶に挿した種子草』.ひやりとした幻想に惹かれます.荻須高徳の『パリーの街』や『時計塔』にはユトリロの影響が見て取れますが,筆痕はより多く残しているようです.三岸節子の花の作品,特に『花(ヴェロンにて)』では大胆な構図に細かく描き込まれた黄色の花群は魅力あります.

千本裕三の『街頭風景(パリ)』は,妻によれば佐伯祐三の作風にそっくり.そう言われればそうかもしれません.有元利夫の油彩とリトグラフ計3点があったのは嬉しかった.日本コロムビアから出ている,クイケン四重奏団のハイドンやモーツァルト作品のCDジャケットではしばしば目にしているのですが,原画は初めて見ました.

外国作品では,ますルオーの道化師2点.いつも同じことを書いている気がしますが,ルオーが生涯にわたって描き続けたテーマの一つである道化師については,その表情に浮かぶ苦悩の度合いによって,それを描いた年代が推定できるに思っています.今回見た2点は比較的後年の作品.

花瓶に生けられた花を描いた作品を多く見ましたが,その中でヴラマンクの『花』の陰影が際立っています.原色の花弁と影の濃さの対比に,暗い情念のほとばしりを感じます.黒コンテだけで描かれたピカソの『闘牛』の鮮やかさ,アイズビリのフォークアート的な『静物』の暖かい抽象性も印象的でした.

理髪店で聴いたジャズ -「Art & Survival」 Dianne Reeves

この日はもう一つ,印象に残るアルバムがかかっていました.


Art & Survival
ジャズ

初めて聴きましたが,一聴してダイアン・リーヴスとわかるスケール感があります.身体全体が鳴っているような声質や,ブラックアフリカの自然志向.娯楽性は十分にあり,決して声高にプロテストを叫ぶわけではありませんが,黒人女性歌手として深いところでビリー・ホリデイに通底する血脈を感じます.

私は,2000年8月のニューポート・ジャズ・フェスティバル・イン・斑尾でこの人の演奏を聴きました.ダイアン・リーヴスの真価はライブでこそわかると言われますが,斑尾という自然に囲まれた屋外会場で,本当にスケールが大きく感動的なステージでした.登場して『モーニング・ハズ・ブロークン』で始めた時は,昼日中なのに夜明けのひやりとした空気を実際に感じたような気がしたほどです.『アフロ・ブルー』もドライヴ感満載で豪快そのものだった記憶があります.

内容は2000年発表の下記スタジオ・ライブアルバムにおおむね再現されていますが,やはり開放感ある屋外会場とスタジオでは弾け方がだいぶ違います.CDでは本人が「自分の家の居間にいるみたいにリラックスして聴いてね」と歌うシーンがありますが,本当にリラックスしたかったのは実はダイアン・リーヴス自身だったのだろうと思います.そういう意味でも,斑尾で聴けたのは良かった.開催されなくなって久しい斑尾ジャズフェスですが,何とか再開してほしいものです.


イン・ザ・モーメント~ライヴ・イン・コンサート
ジャズ

理髪店で聴いたジャズ -「ウォーター・ベイビーズ」 マイルス・デイヴィス

1976年マイルス引退期間中に発表された60年代未発表音源集.アナログ盤で聴かせてくれました.


ウォーター・ベイビーズ
ジャズ

このブログでマイルスの作品を採り上げるのは初.それがこの「アルバムにまではできなかった残り物集」というのは,しかし私としては何の意図もありません.残り物だろうと何だろうと,やはりこの音楽は到底「聴き捨てならない」ものを持っています.

A面が1967年6月,B面が1968年11月の録音.エレクトリックマイルス移行期にあたり,A面は“あの”クインテットなのに対し,B面はキーボードでハンコックに加えてチック・コリアが入り,ベースはデイヴ・ホランドに替わっています.マイルス名義とは言え,アルバム5曲中4曲までがウェイン・ショーターのオリジナルで,特にA面はこの人独自の漆黒の世界を,マイルスのトランペットが時に切り裂き,時に漂うといった風情.

A面に収められた『Water Babies』, 『Capricorn』,『Sweet Pea』といった美・名曲群が怖ろしいほどの緊密感をもって迫ってくるの較べ,B面の2曲はさすがにやや散漫な印象を免れません.古典的なクインテットでやるべきことをやってしまったマイルスが,さらに前進するために行った実験と捉えるべきなのかもしれません.

なお,ショーター自身もまた,電子化路線上でこれら3曲の解体と再構築を進め,1969年にはブルーノートにおける自己名義盤『スーパー・ノヴァ』で再演しています.ジャック・デジョネット(ds),ミロスラフ・ヴィトウス(b),ジョン・マクラフリン(g)といった新時代の精鋭によって形成される土台の上で,ショーターはテナーではなくソプラノ・サックスだけを吹いています.そこにはいないマイルスとの二役を演じたかったのかもしれません.


スーパー・ノヴァ
ジャズ


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最悪想定する傾向はあるでしょうね.でも石橋叩いているだけの人生はつまらない.

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