(小澤征爾×村上春樹×大西順子) プレイズ 「ラプソディー・イン・ブルー」 -続き

チェン・リン(陳琳)指揮によるプロコフィエフの「ロメオとジュリエット」組曲の演奏を挟み,大西トリオと小澤が再登場.小澤の指揮で「ラプソディー・イン・ブルー」が始まりました.SKOのメンバーも意欲満々の感じで,冒頭のクラリネットにもたっぷり表情がついています.

トリオには十分に時間が与えられ,大西順子によるソロ(ピアノトリオによるカデンツァというべきか)が続きます.ソロはここでも様々なスタイルの間を行き来しますが,基調はガーシュインがこの曲を作曲した時代に合わせてラグタイム風のフレージングが多く用いられていました.レジナルド・ヴィールによるベースソロは,リハの時ほど大胆なものではなかったもののやはり見事で,小澤も拍手を送っていました.リハーサルでは苦労していたオケとの受け渡しは何とかうまくいったようですが,このあたりはかなりはらはらしました.

この曲は,クラシック音楽の構成でジャズが得意とする都会の艶っぽさや猥雑さを表現することを目指しているように感じますが,オケはジャズの語法を強いられるし,フロントにいるジャズプレーヤーは数十人ものバックとの対話を求められるということで,いずれにとっても難曲なのでしょう.ここではオケもジャズバンドも超腕利き連中が集まったおかげで,いい意味での放埒な「ラプソディー・イン・ブルー」になったのではないかと思います.

それにしても,ジャズピアニストとしてこれほどの演奏ができる大西がなぜ引退しなければならなかったのか,その本当の理由はよくわかりません.村上春樹は,「これほど力強く才能のあるジャズ・ピアニストに,まさに脂ののりきったところで引退を決意させる日本の音楽ビジネスのあり方に,あるいは音楽的状況に,がっかりしないわけにはいきませんでした.」と書いています.関西にいると大西トリオのライブ演奏を聴きたくてもなかなか機会に恵まれなかったという思いがある私は,さらに落胆の度合いが大きいです.

今後はCDに残された演奏を聴いていくしかないわけですが,私の持っている大西トリオのアルバムは以下の4枚.デビュー作を含んだ最初期のものだけです.ファンだと言いながら,継続してこれらから後にもリリースされた作品を聴いていない私のような者がいるせいで大西が引退することになった...とまでは思いませんが,最近のものもちゃんと聴かねば.ただ,今回のイベントでの演奏を聴く限り,大西ミュージックの美点の多くは初期のアルバムに見いだせるとも感じました.これら4枚のことしか言えませんが,いずれもジャズの醍醐味が味わえるものばかりです.



今回のイベントは,村上が小澤を大西のライブに連れて行ったことがきっかけで実現しました.クラシック音楽とジャズの両方を熱心に聴いてきた村上ならではです.私自身も,ただ好きというだけですが,この両方を聴いてきて良かったと思います.村上も,先に紹介した本の中で以下のように書いています.「どちらかひとつだけしか聴いてはいけないと言われたら,どちらをとるにせよ,ずいぶん淋しい人生になってしまうことだろう.」 まったく同感です.

(小澤征爾×村上春樹×大西順子) プレイズ 「ラプソディー・イン・ブルー」

さる9月6日,2013サイトウ・キネン・フェスティバル松本ですばらしいコンサートがありました.小澤征爾指揮のサイトウ・キネン・オーケストラ(SKO)をバックに,ジャズピアニスト大西順子のトリオがガーシュインの「ラプソディー・イン・ブルー」を演奏したのです.

その時の模様が,リハーサルの一部も含めてNHKの番組として放映されました.全編,大西およびそのトリオのメンバーがクラシック音楽の文脈の中でジャズのスタイルを貫き通そうとする意志が強く表れており,おそろしくスリリングな見ものになっています.

そもそもどういう経緯でこの組み合わせの演奏が実現したのかは,当事者による以下のサイトに詳しいのでこちらを参照してください.

なぜ“ラプソディー・イン・ブルー”をやるのか


また,小澤征爾と村上春樹の出会いやそれ以降の会話については以下の本にまとめられています.


小澤征爾さんと、音楽について話をする
書籍

番組はリハーサルの場面から始まります.オケとトリオとの間の受け渡しのタイミングがなかなか上手く計れず,ちょっと行き詰まったかなという時,突然ベースのレジナルド・ヴィールがノータイムのソロを始めます.ビデオを何度も見なおすと,直前に大西がそれを促すような声をかけているのがわかりました.これがまたすごいベースソロで,小澤も引き込まれて聴いています.そしてそのソロが終わるタイミングを完全に見切った大西のピアノが入ってくる瞬間が鮮烈の極み,見ていて本当に鳥肌が立ちました.個々がソリスト級のSKOのメンバーからも,思わず拍手が湧き起こったほどです.

この場面は,ジャズのプレーヤーが日常的に何をやっているのかをとても象徴的に示したと思います.周りのメンバーが出す音を注意深く聴き,瞬時に最大限の音楽的回答を返す.そういう種類の対話が,この場面に集約されていました.

さて本番はまず,大西順子(p),レジナルド・ヴィール(b),エリック・マクファーソン(ds)によるトリオだけの演奏から始まります.曲目は以下の3曲. 実際には2. と3. の間に バラード「Never let me go」が演奏されたようですが,番組ではカットされていました.

1. So Long Eric (C.Mingus)
2. Meditations For a Pair Of Wire Cutters (C.Mingus)
3. Eulogia ~No.15 (J.Onishi)

1. は大西トリオの看板と言ってもいいくらいよく演奏されるブルースです.大西の左手がゴロンゴロンという感じで低音域を打鍵するのはビレッジ・バンガード のライブの頃から変わらぬ特徴です.右手の不協和音は以前より多用されている気がしました.テンポはめまぐるしく変わり,まるで時間を伸び縮みさせているかのようです.2. もミンガスの曲で,クールに始まりますが.次第に濃いブルースの雰囲気が立ちこめてきます.3. は大西の音楽のショーケースというべきもので,バロック音楽の香りがあり,またジャズの歴史における様々なスタイルが表出されました.昨年秋に引退宣言をした大西が,ジャズピアニストとしての履歴を振り返っているかのようでした.
(続く)

堀米ゆず子 バッハ&ブラームス プロジェクト 第1回

これから年2回のペースで全6回行われる予定の「堀米ゆず子 バッハ&ブラームスプロジェクト」の第1回を聴きました.

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曲目は以下.
1.ブラームス:ピアノ五重奏曲ヘ短調
2.ブラームス:ヴァイオリンソナタ第3番
3.バッハ:無伴奏ヴァイオリンパルティータ第2番

ブラームスの交響曲やピアノ協奏曲,ヴァイオリン協奏曲が私にはすべて大変立派だと感じられるのに対して,小編成の室内楽曲はかなり苦手です.有名な弦楽六重奏曲も,一聴ロマンチックなメロディに溢れているのですが,弦楽器の重なり合いにどこか神経に障るところがあって好きになれずにいます.ブラームスの体臭がありすぎると言ったらいいでしょうか.

そんな危惧を感じながら始まったピアノ五重奏曲.私にとって初めて聴く曲です.ピアノの名手であったと伝えられるブラームスですから,こういう曲ではピアノパートに力が入ったのかもしれませんが,弦,とくにビオラやチェロが支える低域にくらべてピアノの音量が大きく,全体としてふっくらとは響きません.音楽の実体の表面を第1ヴァイオリンが薄く鋭く剥いでいくような趣で,美しさはありますが愉悦感はなく,やはり痛々しさを強く感じます.シューマンの妻クララへの自分の感情を一生抑圧し続けたのではないかと言われるブラームスの,これが偽らざる心象風景かもしれません.

休憩をはさんで2曲目はヴァイオリンソナタ第3番.こちらはヴァイオリン一挺とピアノだけであるためか,あるいは作曲家が自分の世評に満足したり晩年にさしかかるところで一種の諦念を感じたりしたためか,基本的には穏やかな音楽だと思います.たぶん私の感覚が容易に受け付けないのは,ブラームスの音楽における弦楽器のハーモニーの使い方なのでしょう.

そして最後はバッハ.今年4度目のシャコンヌを含むパルティータの2番です.直近ではチョン・キョンファの演奏にちょっとがっかりしたことが記憶に新しいところです.さて,一人で出てきた堀米は拍手も鳴り止まないうちにさっと弾き始めます.これが彼女のスタイルなのでしょう.これから大曲を弾くぞという表情は見せません.テンポも全体にやや速めですが,かなり動かしています.そしてシャコンヌ.表現の彫りは深く,心に迫る部分が多くありました.テンポに関しては,速い部分は本当に超速でした.しかし,大ホールであったためか,楽器を大きく鳴らそうとして音が美しくない部分がありました.重音を強奏するときなど音程が不確かな部分も散見され,これらはちょっと残念でした.

全体として,やや準備の時間が少なかったのかなと感じました.またこの編成だと芸文センターでは小ホールか中ホールの方が良いのでしょう.と思っていたら,今後の5回はすべて小ホールで演奏されるようです.第2回目の演奏会は来年3月ですが,チケットは即日完売.私は取り損ねました.プロジェクトの今後も可能な限り聴きたいと思っています.



エマ・カークビーでジョン・ダウランドのリュートソングを聴く

今年はダウランド生誕450周年だそうです.450年! そんなに古い音楽の音源はうちにはありませんし,耳にする機会もほとんどありません.そのダウランドの歌曲のコンサートがあるという.しかも歌手が古楽分野ではもっとも高名なエマ・カークビー,こんなことははめったにない機会なので何を置いても聴きたいと,平日夜に出かけてきました.


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前半はカークビー一人が一挺のリュートを伴奏に,長くても数分の歌曲を続けて歌います.5曲歌ったところでリュートのソロが入り,またカークビーの歌唱.陽気な歌でもどこか静謐な雰囲気があり,こういうものが聴きたかったんだと愉悦感に包まれます.

近代のオペラの歌唱法で歌われる歌,音程もよくわからない程たっぷりしたビブラートを使って大きな身振りで強い表現をするというのが,私にはどうにもかえって真実味を減じる(平たく言えば嘘っぽい)と感じられてしまうのです.それに対し,今回聴けたカークビーの,決して声量があるわけでも,超人的な音域があるわけでもないが,弱音がきわめて明晰でダイナミックレンジはちゃんとあるノン・ビブラートは,私たちの身の丈にあった表現として大変受け入れやすいものでした.400年前に書き留められた純朴と清澄は,21世紀の今,私たちの心に自然に沁みるものであるようです.

後半はやはりリュートをバックに,メゾの波多野睦美との二重唱.これもすばらしかったです.波多野は時にカークビーを上回る声量で私たちの眼前に迫りました.ややもすると,歌とは人に伝えるために表現するものという観念を私たちは持っていますが,ダウランドの歌曲をカークビーが歌うのを聴くと,内的な必然性だけに駆られて思わず知らず口から迸り出たというような風情がありました.400年の間には芸術の意味合いも変わります.聞き手にそのような感覚を持たせ,まさに今生まれた歌のように聴かせるというのが,カークビーの真骨頂なのかもしれません.

珍しく,コンサート会場でCDを買いました.カークビーにサインをもらいたかったからです.もらった証拠を載せておきます.

ちょっと舞鶴まで

先日,いつものように朝から北摂を流していて,もう少し走ってみようかとR173を北上したら〔舞鶴まで□□km〕の道路標識を見ました.意外に近いなと思ってそのまま1時間も走っていたら,実際に着いてしまいました.舞鶴には北海道へ行く時にフェリーターミナルを利用しに来るわけですが,いつも夜に高速道路を使って来るため,町を見て歩いたことはまだないのでした.この日は何となく来てしまったのでどこへ行くともアイデアはなく,そのまま帰ってきてしまったのですが,もう一度行ってみようと思って3連休の中日に再訪.

朝9時から自治会活動で地区内の公園の清掃があったので,それが終わってから出発.到着したときは昼ご飯の時間になっていたので,東舞鶴の和食屋さんに入りました.刺身も天ぷらもうまく,またひと塩したササガレイの干物が上品な味で大変良かったです.

それからR27を戻って赤レンガパークへ行ってみました.旧海軍の武器庫であった倉庫群を改装して一般公開しています.ひと気のあまり無い棟もあって,そういう場所ではちょっとかび臭いような雰囲気の中,ノスタルジーを感じられます.


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一通り見て今度は五老岳スカイタワーへ.舞鶴の町と舞鶴湾のリアス式海岸が一望できます.タワーへ登ると視点は50m高くなりますが,ガラス越しの風景でちょっと味気ないかな.下の広場からでも十分に展望は得られます.最高気温は23℃.秋らしい一日を満喫できました.

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とよのコスモスの里

少し前に豊能町のコスモスの里に行ってみました.ピンクに埋め尽くされた写真を撮ってみたかったのですが,まだ時期が少し早く,開花した花がまばらな状態でした.日射しがとにかく厳しく,コスモス畑のイメージとはかけ離れた雰囲気でした.ピンクの背景は無理.背景は緑か,空に抜くかですね.

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コスモスは裏側から透けているところを見るのが結構好きです.いいオッサンが下からのぞき見ている図は,とても善良な市民とは見てもらえないでしょうが.

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フランス絵画展

今日は日本海を通過した台風24号の影響で,午前中は強い雨が降りましたが,昼頃から晴れてきて午後は澄んだ空が見られました.ただし,気温も上がってあいかわらず暑かったですね.

さてもうひと月以上前になりますが,酷暑の中兵庫県立美術館にフランス絵画展を見に行ったことをメモとして残しておきます.

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安藤忠雄によるアメリカ・マサチューセッツにあるクラーク美術館の改修に伴い,閉館となる期間にあわせて所蔵絵画がやってきていました.

ルノワールをはじめとしてモネ,ドガ,ピサロ,シスレーといった印象派.コローに代表されるバルビゾン派などの他に,ロートレックなども展示がありました.

ポルシェ911(991)カレラSカブリオレ試乗

今年もポルシェセンターから案内のダイレクトメールをもらったので,芦屋浜での試乗会に行ってきました.10月というのに,朝9:00に自宅を出るときにはZ4の温度計で27℃になっています.最高気温は30℃を超えそうですが,今日は私一人なので当然屋根を開けて名神・阪神高速を乗り継いで芦屋ICから会場の芦屋マリーナへ.


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9:30に到着,10:00から受け付けるというのでしばらく待ってから行くと,もう列ができていました.昨年は素のボクスターに乗ったので,今度はボクスターSに乗ってみようと思っていたら,残念なことに今年は試乗車を用意していないとのこと.そこで選んだのがこれ.カレラSのカブリオレです.


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試乗順は6番目で11:40から.あんなに早く来たのにな.しかしこれは予想していたので,Z4の運転席に座って窓を開け,ペットボトルに入れたお茶を飲みながら時間まで持参した本を読んで過ごしました.さすがに真夏とは違い,30℃近いとは言っても比較的乾燥しているのでまだ楽です.

さて試乗.いつもの通り,最初は若い担当者の運転で.コースはと尋ねると高速を走るというので,下道にしてくれと頼んでコース変更.往路は担当さんが運転しながらいろいろ説明してくれます.小さなコーナーをS字に見立てて曲がってもくれました.帰りは私が運転.やはりよく曲がります.ホイールベースはボクスター/ケイマンより25mm短い2450mm.ちなみにZ4が2495mm.やはりリアアクスルの後にエンジンを置くため,ミッドシップのボクスター/ケイマンより短くなるのでしょう.

エンジンは自然吸気の3.8Lで,400psの440N・m.車重は1500kgあるそうです.スペックだけ見るとやはりZ4に較べて二回りくらい強力そうですが,最大トルクは5600rpmまで回さないと発生しないので,静止状態から全開加速してみた感じでは,400N・mが1300rpmで出てしまうZ4-35iなら一般公道の速度域であればまったくついて行けないということはなさそうな気もします.ともあれ私にとっては35iのエンジンでも過剰性能なので,これ以上のものは望みません.

リアエンジンによるフロント軸重の小ささが,向きが変わる時の軽やかさに直結しているのでしょうね.ここはZ4が太刀打ちできないところで,素のカレラ,新旧のボクスター,そして今回のカブリオレと,どれに乗ってもそれは共通して感じられました.

ただ,私にはやはり横からのシルエットが気になります.エンジンが車体後端に置かれているせいで,そこがふくらんで見えます.屋根を開けた状態のカブリオレではさらにそのラインが強調され,これではどう見てもハチのお腹です.911もフォルクスワーゲンビートルも昆虫になぞらえて呼ばれるのは,やはりこのエンジンレイアウトに依るもので,私にとっては姿かたちがどうしても・・・  しかも車体後部には羽根まで生えています.

いずれにしてもこのクルマの価格は1700万円で,所有することはあり得ません.しかし911系がやたらに高い値付けになっているおかげで,ボクスター/ケイマンという現実的かつ本物のミッドシップスポーツカーが半額で射程に入るのはうれしいことです. もっとも半額でもそう簡単に手は出ませんけどね.

ボクスターSに乗れていれば911のことなど考えなかったと思います.どうもこのクルマ,私にとっては雑念のもとです.天気も良かったし,Z4で日本海でも見に行けば良かったかな.



ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番

古い知人から,勤め先の早期退職制度を利用して55歳で退職したと連絡がありました.もともと野心のある男ではなかったし,仕事も(彼にとっては)プレッシャーがきつかったみたいなので,以前から早期退職を宣言していました.今回,予告通りの行動を採ったということです.再就職もしないとのこと.

私個人としては,私などよりずっと健康には恵まれていて体力も十分だし,年金がフルに支給されるまでまだ10年あるんだから,率直に言えばもっと働けよという印象です.こういう時代,働けるやつは少しでも稼いで税金納めるというのが,まずもって真っ当な要請だと思います.

本人と電話で話したところでは,割増退職金で何とかやっていると言いつつ,すっかりサバサバとして最後の脂っ気も抜けたような感じでした.まだ大学に通っている息子もいるというのに,自分は海外での長期滞在を模索しているとのこと.のん気は昔からで,まあ好きにやって頂戴.

ところでその彼が,最近ラフマニノフのピアノ協奏曲ばかり聴いていると言うのです.4曲あるうちのどれだと聞くと,やっぱり2番かなという答え.まあそうでしょうが,クラシック音楽に名曲はあまたあれど,これほどロマンチックな曲はそうは見あたらないでしょう.ロマン主義時代は過去のものとなりつつあった20世紀初頭に,堂々とこんな曲を発表するのは相当な唯我独尊です.

そんな曲を,55歳になって聴いている.まあこの曲はもちろん私も聴きますが,人前で「これが好き」と言うのはやはりちょっと照れくさいタイプの音楽です.たぶん,仕事(の抑圧)から解放されたことで,よほど感覚が鋭敏になっているのでしょう.毎日が休日ということ自体にはそんなに羨ましさを感じませんが,芸術に対する感興が促進されているのであれば,そういう境遇は決して悪くないのかなと思い直しました.

恥ずかしいようなことを言いつつ,私も映像も含めて結構な数の演奏記録を所有しています.彼はリヒテルの演奏を聴いているようですが,私はやはり新しい録音で聴きたい方で,挙げるとするならまずはツィマーマンですね.


ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第1番、第2番
クラシック音楽


バックは小澤征爾+ボストン響.録音の明晰さもあって,この曲の感傷的とも言えるロマンチシズムをそれほど強調しない作りになっています.この曲の現代のスタンダードといっていいのではないでしょうか.

しかし,ツィマーマンの演奏はこの曲としてはやや硬質に過ぎると感じる人もいるかもしれません.やっぱりこの曲は思い切りロマンチックに演奏されるのを聴きたいという場合は,エレーヌ・グリモ-がいいんじゃないかと思います.


ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番、≪音の絵≫から 他
クラシック音楽


最近ではすっかり貫禄の出たグリモーですが,このジャケット写真の頃はほんとに子鹿のようです.ロシアの陰鬱な空にかかった分厚い雲の間から,凍てついた大地にさあっと日が降り注ぐような瞬間があり,何とも美しい演奏です.この他にも,アンスネスがN響をバックに演奏した映像など,大変すばらしいです.

まあそのうちに,いい年をしたオッサン二人,並んでこの曲を聴いてみる機会があるかもしれません.私自身が仕事から離れるのはまだだいぶ先だと思いますが,様々な制約がなくなったとき,音楽や絵画がとのように感じられるようになるのか,少し楽しみでもあります.



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Author:choby
最悪想定する傾向はあるでしょうね.でも石橋叩いているだけの人生はつまらない.

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