熊野三山に参詣する -後半

神倉神社は現在では熊野速玉大社の摂社とされていますが,その立地の魅力から今回もっとも行ってみたかった場所でした.速玉大社からはクルマで10分足らずの所にある神倉神社の駐車場へ.ここから,源頼朝の寄進と伝えられる石段を登りますが,これがかなりの急坂で,かつ「階段」と思うには一段分の高さがありすぎます.勾配の緩い「女坂」が設けられていることに,下ってくる時気付きました.

苦労して500段余りを登りきると,やがて大きな岩の蔭に押しつぶされそうになって建てられている小さな社殿が見えてきます.この巨岩-ゴトビキ(ひきがえる)岩-が神倉神社のご神体で,しめ縄が架けられています.周囲は断崖になっていて,新宮市街の向こうの太平洋までが見晴らせました.

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前半で柱状節理に触れたように,紀伊半島には火山こそありませんが,古い時代に活発なマグマの活動があった痕跡がそこここに確認できます.私はこれまたまだ行ったことがないのですが,有名な古座川の一枚岩も火山性の凝灰岩だそうです.紀伊半島南部の地下には鉛直方向投影面積が神奈川県ほどもある超巨大岩隗が埋まっていて,古座川の一枚岩はそれが地表面に露出している部分を見ているだけだというのだから壮大な話です.ゴトビキ岩のみならず,この地域の顕著な巨岩信仰がこのような地理的特徴を背景として醸成されたことは間違いないと思います.

さて,神代の雰囲気を満喫したら下山です.ここは2月の火祭りでも有名ですが,夜の闇の中,大勢の上り子たちが松明を持ってこの石段を駆け下りる様を思いました.次は三山最後の熊野那智大社へ30分ほどの移動です.ご神体の那智の滝.関西人なのに,生まれて初めての参拝です.梅雨前なので,残念ながら滝の水量はちょっと少なめでした.

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滝まで行ってから社殿も見てみようと石段を登り返します.そんなに遠くないだろうと甘く見ていましたが,結構登りました.クルマは那智の滝直近の駐車場から少し下った所に置いてしまっていたのですが,上の神社境内にも駐車場があるので,体力に自信がなかったり歩く時間のない場合はクルマで上がらないとかなり大変なことになりますね.

社殿まで来たら結構疲れてしまっていたのと,人が多すぎたこともあって写真を撮る気をなくしてしまいまいました.この那智山には熊野大社だけでなく,隣接して青岸渡寺が建立されています.神仏混淆の香りが濃厚で,古い時代の空気が漂っています.那智の滝と三重の塔の共存はそれを象徴した景色でしょう.

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もう16:30になっていました.登ってきた石段を下っていると,外国人のカップルにバス停までの道を聞かれたので一緒に下りることになりました.男性は英国から,女性はアルゼンチンから旅行に来ているそうです.熊野古道を歩いてきたようでした.さっきの神倉山の頂上では台湾の若い女の子二人組に会ったし,最近はどこかへ出かける度に,しかも観光地としては大して知られていないような場所でさえ,外国人旅行者に会うことが本当に多くなりました.

下りきって二人と別れ,Z4に乗り込んだら17:00でした.日が長い季節とはいえ,夜走るのは好きではないのでそろそろ帰らないと.一日中晴れていて特に昼間のオープンドライブはかなり暑かったけど,夕刻になるとさすがに過ごしやすくなりました.三山を回ってきてここで橋杭岩を見ると,「火の国熊野」という形容が確かに相応しい思いがしました.

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熊野三山に参詣する -前半

私はこれまで,熊野本宮大社だけは二度参詣したことがあるものの,新宮周辺の二つの社へは那智の滝を含めて一度も行ったことがありませんでした.すべて見てこようというツアーです.とは言っても,これはもう半年も前6月上旬の話.梅雨入り直前,景色も緑が重ったるいばかりで大して写真も撮らなかったこともあって放置していたのを今頃アップしています.

いつものように湾岸線を南下.まずは本宮大社を目指します.距離的にはともかく,時間的には田辺まで行って熊野街道(中辺路)を辿るのが早いはずですが,今回はあえて五条からR168を南下し,十津川村を越えて本宮に至るコースを取りました.これまで走ったことがなかったので.

梅雨入り間近とは思えない快晴でした.近畿道美原JCTから南阪奈道に入り,京阪奈道を経てR24へ.五条まで行ってR168へ左折したら,後はひたすら南下します.山が深いです.神武天皇が東征時に難渋したのも無理ありません.


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出発して4時間近く,ようやく熊野本宮大社着.神武天皇を導いた八咫烏に迎えられ,鳥居をくぐって石段を登ります.言うまでもなく旧社地はかつて熊野川・音無川・岩田川の三川合流地点中洲にある大斎原でしたが,130年ほど前の水害で現在の場所に移されています.

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大しめ縄をかけられた神門をくぐって神殿に入ります.中には多くの神様を祀ってあり,参拝順序も決められているようなのですが,これはいつも適当になります.写真は撮影禁止なので,外からだけ.


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昼ご飯を食べ(たはずだがどこで何を食べたか忘れてしまった),規定順路に従い次は新宮へ.熊野川対岸にくっきりとした柱状節理が見えてきます.これほど大きいものではなくても,この辺りの熊野川沿いでは至る所に確認できるようです.私にとっては,南紀で柱状節理と言えば,やはり楯ヶ崎を思い出さないわけにはいきません.


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楯ヶ


本宮大社からは40分ほどで熊野速玉大社到着.朱塗りの拝殿前には歴代上皇・法皇・女院の熊野御幸記録を記した石碑が建てられていました.ここを新宮と呼ぶのは,熊野速玉大社の主祭神の一とされている熊野夫須美大神(くまのふすみのおおかみ)が元々祀られていた神倉山上の社殿-神倉神社-を元宮とするからのようです.

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(後半へ続く)

冠雪した北アルプスを見た信州ツアー 3日目【雨・帰路・東山魁夷美術館】

最終日の朝,蓼科の空は曇で覆われていました.いつ雨が落ちてきてもおかしくない空模様で,屋根は閉めたまま出発.それでも蓼科山ははっきり見えていました.


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下りはじめて間もなく,小さな雨が降ってきました.雨の中をワイパーを動かして走るのも,2年前の夏の北海道以来です.ブレードはこの春新品にしたばかりなのに,フロントガラスが汚れているのか右ワイパーの自励振動がひどく,うるさくて使っていられません.普段使いしていればこんなことにはならないのだろうけど,帰ったら直さないといけないな.

3日目の天気が良くないことは承知していましたが,雨さえ降っていなければ野麦峠か開田高原経由で髙山へ行き,千光寺で円空仏を見るつもりでした.しかし,早々に降り出してしまったので,峠越えは見送り.諏訪から中央道に乗ってさっさと帰ることにします.しかしそれではあんまりなので中津川ICでいったん降り,東山魁夷美術館「心の旅路館」へ寄ることにしました.R19を20分ほど木曽方面へ戻ると,道の駅賤母(しずも)エリア内にある美術館に着きます.



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ここは2011年9月に用があって伊那へ行った帰り,たまたま道の駅賤母に寄ったら併設されていたので入ってみたのでした.木曽路は東山魁夷が若い頃はじめて一人旅をした土地で,その旅にちなんで建てられた美術館だそうです.小規模ですが,いかにもこの地にふさわしい画家の作品を気軽に見られたので気に入っていました.前日の夕刻,蓼科を散歩しながらまるで東山魁夷の絵のようだと感じた風景を,ここで確認できるような次第になったのは雨メニューとしては良かった.下の「秋径」絵葉書買いました.


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(終わり)

冠雪した北アルプスを見た信州ツアー 2日目夜【番外編:ブリティッシュ・サウンドでモーツァルト】

宿泊は蓼科ペンション村の最深部にある「リトルフット」.本来この日は白駒池や麦草峠を越えて八千穂高原まで足を延ばすつもりだったので,到着が遅くなることも見越して蓼科にしたのでした.

斜面に建てられた「リトルフット」の玄関へは,駐車スペースから木製の階段を下って入ります.周囲の木々が落とした葉が階段の両脇に積もっていました.散歩して結構身体が冷えてしまっていたので,まず風呂に入らせてもらいました.

食事は地場の野菜や果物を積極的に採り入れてていねいに作られたもので,美味しくいただきました.そして,食堂スペースに入った時から気になっていたのが,DENON製ターンテーブルに分厚い筐体を与えられたアナログレコード・プレーヤー.しかも音の出口は一目みてハーベスのスピーカーです.アンプは遠目によくわかりませんでしたが,後で確認したらミュージカル・フィデリティのA1で,スピーカー共々英国製です.純A級で,しかもこの筐体だと放熱が難しくて使うには覚悟がいるだろうと思います.極端に控えめに言っても,そこらの家電量販店で適当に買ってきたらこうなったなどというシステムではありません.

また,食堂に隣接した小部屋は大きなディスプレイが置かれたAVルームになっています.こちらは冬のスキー客が主に利用するのかもしれませんが,食事が終わってから棚にたくさん置かれているDVDのタイトルを見てみると,クラシック音楽のライブ映像などもたくさんあることがわかりました.

ハード・ソフトともに内容が大変充実しています.そこで,アナログシステム脇のLPの棚を見てみると,クラシック音楽の音源がたくさんあるようでした.システムの仕様から小編成の音楽が良さそうだと思ったので,オーナーさんにモーツァルトの弦楽四重奏曲「狩」をかけてくれませんかと当てずっぽうにお願いすると,それはないんですが,ではこれをと言ってかけてくれたのが,「狩」と同じハイドンセット6曲のうちの1曲で第14番( K.387)でした.演奏はスメタナ四重奏団.

いやもう最高でした.オーナーさんが「しばらく鳴らしてないので」と仰るとおり,最初はちょっと鼻をつまんだような音がしていましたが,だんだん調子が出てきて,第3楽章に入る頃にはハーベスのちょっと暗め(私のクレモナに較べると...かな)の音色が蓼科の夜にすばらしくフィットしていました.まるまる一曲聴かせていただいたので遅くなってご迷惑をおかけしましたが,私たちにとってこんなリッチな宿泊はありません.この日はR299通行止でがっかりしていましたが,これは本当にその気分を帳消しにしてくれる愉しいレコード・コンサートでした.




冠雪した北アルプスを見た信州ツアー 2日目後半 【乗鞍高原から八ヶ岳・蓼科へ】

K84を登って高原へ近づくにつれ,頂上直下100mほどが真っ白になった乗鞍岳が正面に見え隠れしながら次第に迫ってきて気分が盛り上がります.K84から上高地乗鞍スーパー林道へ取り付いた所でクルマをとめ,晩秋を過ぎて冬枯れの始まった林の向こうの山々を眺めます.

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私が前にこの高原に来たのは1985年か1986年頃です.バイク(GSX750Sカタナ)で来て,マイカー乗り入れ禁止になる遙か前の乗鞍スカイラインを走りました.眺望はすばらしかったけれど,とにかく当時からクルマが数珠つなぎになっていて,私は渋滞しているクルマの脇をすり抜けながら登りました.あの高度では私のバイクのキャブレターのエンジンはアイドリングが不安定で,前のクルマに並んで待っていられなかったためです.

あれほどの景観を自分の足で歩かずに見ることができる道路は国内にはたぶん他になく,放置すればクルマで溢れかえってしまうのは無理ないでしょうね.残念ながら規制は仕方のないところだと思います.

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上高地乗鞍スーパー林道は,2014年にZ4で来た時に奈川側から登ろうとして取り付きまで来て初めて通行止めになっていることを知って残念がった経緯があります.今回はそのリベンジです.当初紅葉を期待していましたが,ここまで来る道中でその可能性はないことがわかっていました.それでも登るほどに乗鞍は大きさを増すようで,安房峠に続いてここでも景観を満喫できました.ただ,運転しながらであれば,今回とは逆に奈川側から登って乗鞍高原に下る方が眺めは良いかもしれません.

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ところどころで紅葉の名残を見ることはできましたが,白樺峠付近では広葉樹はすべて葉を落とした状態で冬を待つばかりでした.峠直近の白樺湖周辺も寒々しく,一瞥しただけで展望台への遊歩道入り口へ.展望台への往復40分を歩くかどうか迷いましたが,これから一気に麦草峠まで行くつもりだったので散歩はパス.

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そのままスーパー林道を奈川まで下り,K26へ出て北上.再びR158で松本へ.中央道に乗って諏訪ICからR299で麦草峠へ向かおうとしました.ところが茅野市街の電光掲示板に「麦草峠 積雪 通行止」の表示が.前々日までの雪で峠の通り抜けができなくなっているらしい.またか.前回の白樺峠に続き,またも情報収集漏れです.といっても仕方ありません.今晩の宿泊は蓼科なので,もう諦めてこのままのんびり道草しながら向かうことにします.

R299を東進するにしたがって八ヶ岳が大きくなってきます.蓼科あたりの人は,「渋峠が開放されるまでは麦草峠が国道では最高点だったんだけど」とちょっと残念そうに言います.まあそれほど高度のある峠なのだから,八ヶ岳が冠雪していることを考えると,麦草峠の積雪は予想しておかなければならないところでした.


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こうなったら八ヶ岳を眺めながらのんびり.田に干された稲わらが遠目に幾何学的ですがすがしい.宿に着き,カメラだけ持って夕刻の散歩に出ました.蓼科山が暮れてゆき,まるで東山魁夷の世界.いやほんとにこういう風に見えるんだと画家の目と腕に改めて感心しました.


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最悪想定する傾向はあるでしょうね.でも石橋叩いているだけの人生はつまらない.

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